信暁の著書として『勤王護法 信暁学頭』(昭和11年)は58点の書名を掲載しているが、本研究ではそれを補訂するかたちで、平成26年度は大行寺、龍谷大学大宮図書館、大谷大学書館、佛教大学図書館、山形県酒田市立光丘文庫、金沢大学図書館、九州大学図書館での調査を実施し、27年度は国立国会図書館、日比谷図書館、横浜市立大学図書館、弘前市立図書館、北上市立図書館、津市立図書館で調査を行なった。そして、その成果として信暁の著書94点166種の書誌を確認することができた。この94点の内訳を記すと、板本が43点(一枚摺りを含む)、写本が27点(板本と写本が両方現存する2点を含む)、書名のみで書物の現存が確認できないものが26点であった。この成果は「大行寺信暁に関する書誌学的研究」(科研費報告書、平成29年3月刊)として公刊した。 また、平成28年度仏教文学会(大正大学)で「大行寺信暁『山海里』の書誌学的研究―近世後期京都に於ける真宗末寺の出版―」と題し、『山海里』の板元と弘通(販売等による普及)に焦点を当てて発表した。この発表では『山海里』全12篇は寺版であるが、その第5篇以外はすべて、信暁が住職を勤める大行寺が板元を務め、第5篇は大行寺とその本山に当たる佛光寺が共に板元を担っていたことを明らかにした。また、寺版である『山海里』の支配人(実際の出版実務を担当する人)は京都の本屋、菱屋友五郎、菱屋友七が担い、その弘通所は京都を中心とした三都、肥前、肥後、信州に広がっていたこと報告した。そして、この弘通には京都の永田文昌堂がコーディネーターの役割を果たしていたのではないかと推測した。なお、この発表はその後、『佛教文学』42号(佛教文学会、2017年4月刊行予定)に掲載される予定である。 このように本研究は当初の計画通りに遂行され、上記の実績を収めることができた。
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