研究課題/領域番号 |
26370206
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
大橋 直義 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (50636420)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 巡礼記 / 参詣記 / 寺社縁起 / 私撰国史 |
研究実績の概要 |
大和・紀伊両国に関わる巡礼記・参詣記とその関連資料の博捜および分析という観点について、本年度は下記の三点を主たる実績とすることができる。 第一には代表者が関与した研究報告、シンポジウム基調報告(兼司会)である。昨年度より継続的に検討を行っている私撰国史(『扶桑略記』)諸伝本と漢文伝記・寺社縁起・巡礼記という観点については、「伝記への執心─『扶桑略記』のある側面について」(国際日本文化研究センター、2015年7月5日)・「『扶桑略記』陽成天皇紀の歴史観」(国文学研究資料館、2015年8月18日)を行った。なお前者については2018年度内に刊行される論集に論文が掲載されることが、また後者については2016年度内に刊行される論集に論文が掲載されることが確定している。また、大規模学術フロンティア促進事業「日本語の歴史的典籍の国際共同研究ネットワーク構築計画」第1回日本語の歴史的典籍国際研究集会プログラム「可能性としての日本古典籍」におけるパネルとして「紀州地域と寺院資料・聖教─延慶本『平家物語』の周縁」の座長・基調報告を行った(国文学研究資料館、2015年8月1日)。さらに発表年度は2016年度となってしまったが、本研究課題に最も深く関わりつつ当該年度内に準備を行なったものとして同年4月17日開催の関西軍記物語研究会では「法華寺縁起考」とする口頭発表をあげる。 第二には本研究計画をその核とする研究論集等の企画である。代表者が編者となるものが2編、企画の枢要に関わるものが1編、現在進行しており、本研究計画の成果をかかる媒体で報告すべく、調整中である。 第三には巡礼記・参詣記に関するテクストの調査・分析である。本年度は、和歌山県内の古刹である道成寺の悉皆調査に主に従事した。その成果の全貌を本研究計画期間中に明らかにすることはできないと推定されるが、一部なりとも、上記媒体等を通じて公にしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度より集中的に道成寺(和歌山県御坊市)の悉皆調査を行なっている。 この、当初は予想していなかった調査活動ため、当初予定の特殊文庫・公立図書館に所在する巡礼記テクストの博捜作業、あるいは粉河寺等他寺院の調査研究に遅れがでていることは否めないものの、本研究計画の本旨に叶うものであり、総合的には概ね順調に進展していると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、紀伊・大和両国に関連する巡礼記参詣記資料、および寺社縁起関連資料、そこにかかわる私撰国史・軍記物語等に関連する資料の博捜を行っていくが、その中心軸には、上記の道成寺文書悉皆調査をすえたい。道成寺という熊野参詣道の途上に所在する古刹であり、かつ道成寺縁起絵とその絵解きに関連する貴重な資料を調査分析できることは、本研究計画の本旨にとって重要であると考えている。その研究推進の方策のひとつとして、代表者が勤務する和歌山大学内において、道成寺に関連する企画展示を行うなどの方法も予定している(2016年秋)。 その他、これまでの調査研究(巡礼記参詣記に関する調査と寺院経蔵予備調査のさらなる蓄積)をさらに進展させ、それを公開する水準にまで高めることによって、着実に研究計画を進展させていきたい。
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