研究課題/領域番号 |
26370212
|
研究機関 | 國學院大學 |
研究代表者 |
豊島 秀範 國學院大學, 文学部, 教授 (90133272)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 源氏物語 / 青表紙本 / 河内本 / 別本 / 写本の翻刻 / 本文対校一覧 / 写本のデータベース化 / 本文に関する新提言 |
研究実績の概要 |
「基盤研究(C)」の当該年度の研究テーマは「源氏物語の新たな本文関係資料の整理とデータ化及び新提言に向けての共同研究」である。基礎作業として「花宴」「葵」両巻の十数本の写本を翻刻し、いわゆる青表紙本・河内本・別本の本文を、比較検討が可能な対校一覧表にまとめてデータ化した。10年間の科研費による二十巻に及ぶ同様の本文比較作業を通して、源氏物語本文の特質を見定めており、本文に関する新たな提言を行ってきている。 また、研究代表者・連携研究者などによる「源氏物語の本文関係資料に関する共同研究会」を毎年開催しており、当該年度は12月24日に、國學院大學を会場として、以下の研究発表を公開で行った。「河内本の本文の特徴─「紅葉賀」を中心に─」豊島秀範(國學院大學・研究代表者)、「『源氏物語』蓬生巻の末摘花像の違いについて─十四の伝本から─」太田美知子(國學院大學)、「三条西家本源氏物語の形成過程に関する一考察」上野英子(実践女子大学)、「大島本『源氏物語』の本文史と注釈史再考」上原作和(桃源文庫日本学研究所)、「明融臨模本の和歌書写様式」神田久義(田園調布学園大学)、「『源氏釈』古筆切拾遺」田坂憲二(慶應義塾大学)、「本文と外部徴表の相関性」中村一夫(国士舘大学)、「国文研蔵橋本本「絵合」「松風」「藤袴」について」伊藤鉄也(国文学研究資料館)。なお、ここでの口頭発表の内容は、『源氏物語本文のデータ化と新提言 Ⅵ』の『報告書』に掲載して発行する作業を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
〔基盤研究A〕平成19~22年度、〔基盤研究C〕平成23~25年度、〔基盤研究C〕平成26~28年度と、計10年間にわたり、「源氏物語の本文資料に関する研究」を継続し得たことは、従来の『源氏物語』本文に関する青表紙本・河内本・別本という呼称を初めとする本文に関わる研究の行き詰まりを乗り越えて、新たな提言を為る上に、貴重な研究機会であり、当初の目標に近い成果を上げることができた。だが、まだ道半ばである。この方向の研究作業には、膨大な時間と作業量を伴うが、今後とも継続すべき研究である。 ただ、平成26年に研究代表者(豊島秀範)が、胃癌による胃の全摘手術を受けるなど、体調を崩したことにより、研究作業に遅れが生じて、平成28年度で完成すべき『報告書』などを、平成29年度の今も、作成作業を継続しているという、予想外の事態が生じた。しかし、〔基盤研究C〕ということから、1年間の延期を認めていただき、最後まで研究作業ができることに感謝したい。 ひとまず、10年間の科研費による研究作業を終えたいが、体勢を立て直して、残りの巻々についての研究へと向かいたいと思っている。
|
今後の研究の推進方策 |
『源氏物語』54巻の、半数弱の巻について、巻ごとに、いわゆる青表紙本・河内本・別本と称している本文の中から、中心となる十数本を選び、それぞれの本文の異同が一目で判る〔本文対校一覧〕を作成し、それをデータベース化して、いつでも一般公開が可能な状況にある。 ただし、写本の所有者などとの関わりから、今はまだ、そのデータを公開できずにいるのは残念であるが、時代の推移と、研究者を初めとする人々の意識の変化により、いずれは公開が可能になると思われる。そうすれば、従来の紙ベースの資料では判断が難しかった本文の実体が、明確に判り、本文に関する新たな提言も、現実味を帯びてくるはずである。 その時のために、残された巻々の本文の翻刻と対校一覧の作成とデータベース化を、着実に進めていくことが必要である。ただし、『源氏物語』の本文は、一つの写本であってもその全体は膨大な量に及ぶために、共同研究者の存在が欠かせない。今まで本文の研究が遅遅として進まなかったのも、そのためであるが、10年間の科研費による研究作業は、その方向に大きな弾みを与えてくれたので、今後とも着実な歩みを続けていきたいと思う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者(豊島秀範)が、胃癌による胃の全摘手術を行ったことなどにより、2015~2016年度にかけての研究作業に大幅な遅れがでて、本来ならば発行を済ませている2冊分の『報告書』の作成費と郵送費、およびデータベース化に伴う外部業者に支払う費用などが、支出出来ずに滞っていることによる。
|
次年度使用額の使用計画 |
二冊分の『報告書』の内容の大部分は出来つつあり、8月~9月の頃には、『報告書』の完成と、それに掲載した本文資料に関わるデータベース化も終えることができるので、いま現在、未使用の金額は、支出される見込みである。 なお、研究代表者(豊島秀範)の体調も、ほぼ平常の業務ができるところまで回復しているので、計画的に研究作業を進めることができている。
|