平成26年度に開始した「基盤研究(C)」(研究テーマ「源氏物語の新たな本文関係資料の整理とデータ化及び新提言に向けての共同研究」(課題番号26370212))は、3年目の平成28年度で終了の予定で作業を進め、当該年度の12月24日には國學院大學を会場として合同研究発表会を開き、以下の研究発表を公開で行った。「河内本の本文の特徴―「紅葉賀」を中心に―」豊島秀範(國學院大學・研究代表者)、「『源氏物語』蓬生巻の末摘花像について―十四本の伝本から―」太田美知子(國學院大學)、「三条西家本源氏物語の形成過程に関する一考察」上野英子(実践女子大学)、「大島本『源氏物語』の本文史と註釈史再考」上原作和(桃源文庫日本学研究所)、「明融臨模本と和歌書写様式」神田久義(田園調布学園大学)、「『源氏釈』古筆切拾遺」田坂憲二(慶應義塾大学)、「本文と外部徴表の相関性」中村一夫(国士舘大学)、「国文研蔵橋本本「絵合」「松風」「藤袴」について」伊藤鉄也(国文学研究資料館)。 さらに、基礎作業として「花宴」「葵」両巻について、各々十数本の写本を翻刻し、いわゆる青表紙本・河内本・別本の本文を、比較検討が可能な対抗一覧表にまとめるデータ化を進めてきた。そして、都合10年間に及ぶ科研費による二十巻に及ぶ同様の本文比較作業を通して、源氏物語本文の特質を見定め、本文に関する新たな提言を行ってきた。 ところが、研究代表者(豊島秀範)の身体の不調により、翻刻作業その他に大幅な遅れが生じたことから、一年間の補助事業期間延長を願い出て、四年目の平成29年度をもって、当初の計画を遂行し、『報告書 Ⅴ』と『報告書 Ⅵ』を作成し、都合10冊の『報告書』をもって、『源氏物語』の本文に関する新提言を、各研究者が論文の形で発表することができた。ご配慮に感謝したい。
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