本計画は、室町後期に流行した語り物芸能である幸若舞曲が、江戸期に入って芸能としては消滅したが、絵巻や絵本、屏風絵など視覚文芸として新たに享受された様相を具体的にとらえ、文化的な展開を明らかにすることを目的とする。 幸若舞曲の絵入り本に関しては、すでに基礎的研究として、現在確認される作例を「幸若舞曲の絵入り本一覧稿」に集成していたが、本計画ではそれ以降に発見紹介された資料を博捜し、個人蔵や地方所在の資料を加えてリストの充実をはかり増補改定版を刊行することができた。また、チェスタービーティ・ライブラリー『舞の本絵巻』や海の見える杜美術館『舞の本絵本』を調査し、江戸前期の絵入り本史に位置付けた。
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