研究課題/領域番号 |
26370227
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
志立 正知 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (70248722)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 軍記 / 歴史認識 / 地誌 / 自己認識 |
研究実績の概要 |
地域伝承の形成、地域における歴史認識形成の問題を総合的に捉えるための基礎的作業として、秋田県立図書館・秋田公文書館・弘前市立図書館の資料調査を行なった。また、当初計画には含まれていなかったが、調査の過程で秋田の義家伝承との関わりの深さが明らかになった山形庄内地方についても、光丘文庫(酒田市)、致道博物館(鶴岡市)、鶴岡市立図書館の資料調査を、後述する他の科研グループと合同で実施した。撮影したデジタルデータについては現在適宜翻字作業を行なっているところである。 本研究において中心的資料となる各藩における地誌編纂の問題については、藩撰地誌の嚆矢とされる『会津風土記』の成立背景と編纂方法を軸として、これが幕府の命による国絵図制作、寛文印知改めに伴う鄕帳整備や、『寛永諸家系図伝』の編纂、『本朝編年録』『本朝通鑑』などの修史活動、さらには林鵞峯による『奥羽軍志』刊行に象徴される源氏義家流を軸とした秩序意識形成の問題との関連性に注目した基礎的な考察を試みた。その成果については、伝承文学研究会平成26年度大会のシンポジウム「合戦物語の中世・近世」(26年9月5日、青山学院大学)で報告、またその一端を『文学』(第16巻・第2号、岩波書店)に掲載した。 また、地誌や領主の自己認識形成と密接に関連することから、大名文化圏、和歌活動を対象とした他の科研グループ(「松代・一関・南部藩・秋田各藩の和歌活動・俳諧活動による大名文化圏」(課題番号:25370223-03、研究代表者:平林香織)、「東北地方諸藩の和歌活動と国学者の和歌思想との関係を解明する新研究」(課題番号:26370229-01、研究代表者:錦仁))と共同で、シンポジウム「藩主の交遊」(26年7月26・27日、致道博物館(鶴岡市))を開催、俳諧を媒とした藩主たちの交遊の様子、大名文化圏における和歌の意義などについて研究を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のように、地域伝承や地域における歴史認識の形成、領主の自己認識形成の解明という目的については、研究はおおむね順調に進展している。ことに地誌の編纂が、17世紀における幕府による知の再編ともいうべき一連の動きと密接に関係していることは、東北各地において、なぜ義家伝承がしばしば地誌に記されるのか、前九年・後三年合戦や田村麻呂による征夷を軸とした歴史認識が形成されているのか、という問題に深く関わる大きな手掛りであろう。 その一方で、調査対象地域を山形にまで拡大したため、日程的な余裕がなくなり、盛岡・一関についての調査を実施することが出来なかった。これについては、27年度の調査対象地域の見直し、調査日程の調整などを行なうことで対応可能の見通しである。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画を着実に実行するというのが、まずは基本となる。ことに、26年度に積み残した一関、盛岡の資料調査の実施を急ぐ必要がある。また、南部藩に関しては盛岡に加えて八戸の調査が不可欠となる。一方、津軽藩に関しては、昨年度に弘前の調査を一部実施出来たので、それをさらに継続する予定である。 なお、26年度の研究の中で、地誌や領主の自己認識が、幕府による知の再編と密接に関わることが顕かになってきたので、これについては更に検討を加える必要がある。また、東北と比較するためにも、西国諸藩の地誌等にも目配りをするべく、計画を一部変更する。
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