研究課題/領域番号 |
26370229
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
錦 仁 新潟大学, 人文社会・教育科学系, フェロー (00125733)
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研究分担者 |
志立 正知 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (70248722)
平田 英夫 藤女子大学, 文学部, 教授 (70339638)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 藩主 / 国学者 / 和歌 / 和歌思想 / 安田保則 / 林子平 / 菅江真澄 / 古川古松軒 |
研究実績の概要 |
研究課題は「東北地方諸藩の和歌活動と国学者の和歌思想との関係を解明する新研究」である。まず「諸藩の和歌活動」に関しては、庄内藩主・酒井忠徳の和歌資料の翻刻・内容分析をし調査報告書を刊行した。長年にわたって宮部義正・日野資枝・冷泉為泰らに詠歌指導を受けていたが、それを示す書簡のやりとり、彼らより伝授された秘伝書、詠歌指導の実態を示す添削文書など──すべて新資料──を分析して考察した。 「国学者の和歌思想」に関しては、仙台藩の国学者・安田保則の自筆文書を発掘・収集し、その内容を分析した。その成果は、延長を認められた29年度中にいくつか論文を書いて公表する。 研究成果は、編著『日本人はなぜ、五七五七七の歌を愛してきたのか』(笠間書院、2016年12月)の三編の拙論にまとめ、本書の目次・構想にも研究成果を反映させた。また、拙論「(菅江)真澄における和歌──本居宣長・林子平・古川古松軒と比較して──」(『19世紀学研究』11号、2017年3月)などにまとめた。 要点を述べると、江戸幕府老中・松平定信の治世方針の範囲の中に、諸藩の儒学者・国学者および宣長・子平・古松軒らもおり、その中で彼らは自己の文芸思想・政治思想を述べていることを見いだした。とりわけ重要な発見は、和歌の思想が当時の国家観を形成するための一つの基盤として活用されている事実である。 林子平は琉球国の王子はもとより身分の低い船頭までが日本の和歌を習い覚えて詠むようになっているゆえに、琉球国を日本文化が浸透している友好国と見なした。また、蝦夷もまた日本文化が行き渡る友好国にすべきであると述べ、政治方針の変更を唱えた。この子平の思想を丁寧に分析すると、菅江真澄や古川古松軒も殆ど同一の和歌思想をもっており、その精神に則って蝦夷を日本化すなわち「化服」させるべきだと考えて、和歌を詠んでいることがわかった。さらに考察を進めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
28年6月末に腹部に病気を生じ手術をし回復が遅れたため、文献収集の調査旅行が思うようにできなかった。講演・論文執筆・著書刊行は計画通りに実行し、初期の目的を達成することができた。 とりわけ松平定信・本居宣長・林子平・古川古松軒・菅江真澄の著作を比較検討し、共通の和歌思想があること、和歌が浸透し和歌を詠む人の多い地域が真の意味での日本であるという思想があることを発見・確認することができた。藩主はそのためもあって和歌の詠出に励み、諸藩の国学者および藩外の国学者もそういう和歌思想の形成に尽力していることがわかった。 北大附属図書館などの文献調査旅行ができなかったが、延長を認めてもらった本年度に実行して、さらなる成果をあげたい。
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今後の研究の推進方策 |
幕府派遣の奥羽・蝦夷巡見使たちの巡見日記が多数遺されているが、本格的な研究は全くされていないことがわかった。また、彼らが描いた蝦夷地などの地図があり、余白にさまざまな観察記述があり、そこに和歌に関する記事もあることがわかった。本居宣長のような国学者、安田保則のような藩お抱えの国学者のみを研究対象にするのではなく、経世家である林子平、民俗学の祖といわれる菅江真澄、地理の研究者であった古川古松軒など、分野の異なる人物の著作を比較の俎上にあげて検討しなければならないことがわかった。延長を認めた貰った本年度は、それをテーマに取り組んでいく。新資料の発掘調査とこれまでにない視座からの資料分析を履行し、成果をあげる。
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次年度使用額が生じた理由 |
6月末に腹部の手術を受け、病後の回復が少し思わしくなく、とりわけ夏から冬にかけて予定していた調査旅行(資料収集)および翻刻作業と資料内容の分析作業が予定どおりに進めることが出来なかった。また、連携研究協力者の代行を考えたが、学内の要職に就くなどして無理であった。また各地の図書館等に行って必要な資料の発見やその分析等が研究代表者である錦の専門性の高い分野なので、やはり代行は無理と判断した。病気がほぼ回復してから錦が完全実行するほかないと考え、1年間の研究期間の延長を願い出て認められた。
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次年度使用額の使用計画 |
北大附属図書館に所蔵されている幕府派遣の巡見使が書き残した旅日記・地図など、秋田県にかほ市の郷土資料館所蔵の歌枕および巡見使の旅日記、宮城県図書館の郷土資料などの調査旅行の費用にあてる。また、研究成果を収めた報告書を刊行する費用にあてる。
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