平成26年度は、伊藤永之介の作品年譜、人物年譜の作成、取材手帳や手紙の翻刻にあたった。とりわけ、作品年譜については、予想以上に事実の確認と作業に手間取り、来年度もフィールドワークとともに、引き続き、この作業をつづけていきたい。 なお、秋田県土崎港図書館で、「種蒔く人」同人と伊藤永之介の関係を探る資料調査を行なったところ、「種蒔く人」の設立者のひとりである金子洋文が、伊藤永之介とかなりの書簡を交換しているばかりでなく、伊藤永之介の小説をかなり劇作化していることがわかった。これについても、すでに読解を進めている。 また、秋田県立図書館での史料収集においても、当時の伊藤永之介を偲ぶ写真や録音資料を見たり聞いたりすることができた。録音資料は、ラジオ公民館で伊藤永之介が鶴田知也と対談しているもので、これについては、メモをとることができた。 以上のように、基本的作業とならんで、『朝市』『山桜』など、あまり知られていない伊藤永之介の女性や都市を扱った作品を分析することで、彼の文学の幅の広さを確認したり、八郎潟の基本文献を読んで、来年度以降の準備を行なったり、伊藤永之介の童話を読むことで、人間と自然をめぐる華麗のさまざまな感性に触れたりすることで、開発と人間をめぐるさまざまな局面を具体的に知ることができた。ほぼ、伊藤永之介の作品については集めることができたので、未読の作品の分析も引き続き進めていきたい。
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