今年度も前年度に引き続き、瓦版やおもちゃ絵版画を中心とした文献資料の閲覧・調査を研究の柱に据えて実施した。調査を行った機関は東京都立中央図書館特殊文庫(加賀文庫・東京誌料)、江戸東京博物館、国文学研究資料館、香川大学図書館神原文庫、大阪府立中之島図書館である。 東京都立中央図書館特殊文庫(加賀文庫・東京誌料)では、見立番付を中心とする瓦版やおもちゃ絵版画の原本を直接披見するとともに、写真をマイクロフィルムによって閲覧することができた。また、江戸東京博物館では大量のおもちゃ絵資料の写真を資料アルバムから閲覧することができた。国文学研究資料館においても同館所蔵のおもちゃ絵資料原本を直接披見した。さらに他館所蔵のおもちゃ絵資料の写真をマイクロフィルムのよって閲覧することもできた。香川大学図書館神原文庫では今日孤本となっていると推定される他館には所蔵されていない貴重な複数の瓦版原本を閲覧・調査することができた。大阪府立中之島図書館では見立番付の瓦版を披見することができた。 以上の結果、研究課題である江戸時代から明治時代初期にかけて摺られた瓦版やおもちゃ絵資料の中から大量の歌謡詞章を見出すことができ、それらの資料をもとに近世歌謡史の一齣を構築することが可能となり、たいへん有意義であった。 一方、わらべうたに関わる貴重なおもちゃ絵資料2点を購入した。近時それらの資料を紹介する予定であるが、これも近世歌謡史を構築する一助とすることができる資料として有意義なものである。 なお、奈良県五條市に伝承される篠原踊りの研究の一部に、本課題で得られた成果が反映されている。
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