最終年度の研究実績としては主に次の三点があげられる。 まず第一点目として、黄霊芝の日本語俳句についての分析を行い、その成果を台湾・日本それぞれにおいて口頭発表した。黄の俳句歴は六十年に及び、これまでに公にされたものだけでも2700句余りが確認される。よって総合的な分析は今後も継続していく必要があるが、黄の俳句観やその方法の特徴に関する基礎的な考察は提出し得たと考える。 次に第二点目として、一点目で明らかにした俳句に関する考察、並びに前年度に口頭発表を行った黄の日本語小説「蟹」に関する考察をそれぞれ雑誌論文として公にすることで、より広く研究成果を社会に還元することができた。 最後に第三点目として、黄霊芝の追悼集刊行に寄与することができた。黄は2016年3月12日に逝去、4月に台北にて葬儀がとり行われた。その葬儀の際、参列者には黄の作品を収録した追悼集が配布された。研究者がこれまでに編集・活字化した「自選百句」「年譜」が収められることとなり、データを最新のものに改めて遺族に提供することができた。研究対象者である黄の死去は取り返しのつかない甚だ残念な事態であるが、これまでに本研究を通じて最晩年の黄の声をインタヴュー調査等で記録できたことが、せめてもの救いである。 その他、本研究期間の終了後になるが、本研究の成果を総括すべく、2017年7月(於日本)、8月(於台湾)、10月(於韓国)に、黄霊芝文学に関する総合的考察を学会発表することが既に決定済みである。
|