研究課題/領域番号 |
26370246
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
板坂 則子 専修大学, 文学部, 教授 (30134266)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 春本 / 戯作 / 国際情報交換 / 大英博物館 / 文のはやし / 袋法師絵詞 |
研究実績の概要 |
8月24~30日に板坂と井黒がイギリスに出張し、大英博物館を拠点に、ロンドン大学SOAS等で春本を閲覧・研究した。大英博物館では日本セクション長のTimothy Clark氏の好意により、日本・永青文庫で9~12月に行われた春画展出品予定であった貴重な作も日本セクション室において連日、長時間を掛けて調査でき、大きな成果を挙げることが出来た。 また前半期には、京都・国際日本文化研究センターにおいて、Andrew Gerstle氏(ロンドン大学)、矢野明子氏(ロンドン大学、9月より大英博物館)、早川聞多氏(元国際日本文が研究センター教授)、石上阿希氏(国際日本文学研究センター)と共に春画研究会を月に一度程度、定期的に持った。研究会には日本滞在中の海外の春画研究者も出席し、初期春画の作品中心に研究を重ねた。 それらの成果として、井黒氏は中世日本に於ける三部の春画絵巻の中の「袋法師絵詞についてこれまでの研究成果を纏めて論文発表し、板坂は幕末期春本「文のはやし」の研究成果として論文発表を始めた。この「文のはやし」は十返舎一九によって定型化され、幕末から明治初期に掛けてもっともよく読まれた艶書往来型の春本であるが、下部に艶書が並び、上部の頭書に性に関わる具体的な知識が中世の「黄素妙論」や平安期の「医心方」などに基づいて並ぶ実用書としての性格を大きく持った春本であり、型としては女子用往来文にのっとっている。この「文のはやし」型春本を板坂は約50部入手しており、江戸全期を通じて、最も多く読まれた春本の一つとされよう。このような性に関わる具体的な情報を伝える春本の広範な出版を考えると、実用書としての春本の存在をもっと大きく捉える必要があるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・大英博物館所蔵の春画・春本を中心に、日本での東京・永青文庫の春画展示、京都・細見美術館での春画展において代表的な春画・春本を概観することができた。 ・中世の三大春画絵巻の中で「袋法師絵詞」についての研究を纏めることが出来た。 ・幕末から明治初期に掛けて最も多く作られたと思われる「文のはやし」系の艶書往来型春本についてほぼ網羅的に調べ、その契機となった十返舎一九と溪斎英泉の作の艶書部分の翻刻と改題を公開できた。また、内容的なまとめも現在、投稿済みであり、また派生する『文のゆきかひ』中の文章と川端康成『眠れる美女』、ガルシア・マルケス『わが哀しき娼婦たちの思い出』についての論考もドイツのネット上論文誌に投稿すみである。 ・曲亭馬琴を中心とした代表的な戯作者の春本作品は収集中であり、いまだ考察に入っていないのがやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
・曲亭馬琴の代表作品の多くは他作者によって春本化がなされている。また、馬琴の初期には自らが筆を取った春本もある。これらを蒐集、調査し、戯作と春本がどのように連関しているかを考えたい。 ・中世春画絵巻についても、残る一本「稚児草子」について考察したい。ただし、本作は伝本が極めて少なく、大英博物館所蔵の一本を除いては、いまだ調査・撮影に至っていない。伝本をどう探索するかが課題となろう。
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備考 |
上記はドイツでの日本学関係の論文誌ですが、ネット上でのみ閲覧できます。すなわちサッシ形態は持っていません。
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