研究課題/領域番号 |
26370247
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研究機関 | 二松學舍大學 |
研究代表者 |
稲田 篤信 二松學舍大學, 文学部, 教授 (20168404)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 世説新語補 / 唐詩選 / 和刻本 / 通俗解 / 平賀中南 / 石島筑波 / 河内屋吉兵衛 |
研究実績の概要 |
本研究は『世説新語補』及び『唐詩選』を主たる素材として、江戸期注釈の中で、講釈・国字解などの通俗的注釈の位置を検証することを課題としている。和刻本、唐本の両面から伝本調査を行うことと、石島筑波、平賀中南、河内屋吉兵衛などの個別事例に則して考察することを念頭に置いている。 本年度調査及び資料収集した主な古籍・資料は、以下の通りである。 国内の場合。蓬左文庫(名古屋市)において、『唐土名勝図会』3本の書誌調査を行った。広島市立図書館浅野文庫において、『秘傳花鏡』2種、『世説新語補』万暦庚寅序刻本などの書誌調査を行った。前者は、見返しに「平賀先生校正」とあるため、坊間、平賀源内著として扱われる書であるが、なお中南の関わりの可能性を検証するため調査を行っている。三原市立中央図書館には2度訪館し、中南資料の収集のほか、『世説新語補』関連では『世説新語補索解』、『世説最解』、『世説雕題』、『唐詩選』関連では、『唐詩選国字解』などの調査を行った。国立国会図書館および都立中央図書館において、平賀中南『春秋稽古』の伝本を調査した。早稲田大学図書館においては、石島筑波の詩文の自筆稿本の調査を行った。二松學舍大学東アジア総合学術研究所において、芳野金陵旧蔵書の内、安永和刻本『世説新語補』、『世説蒙求修辞』(写本)の調査を行った。龍谷大学図書館において、森川竹窓『古香斎随筆(筆記)』の調査を行った。 海外の場合。故宮博物院図書文献館、台湾大学中央図書館、国家図書館(いずれも台北市)において、『唐土名勝図会』後刷本、『世説新語補』楊守敬旧蔵本、『世説新語補』清版、安永和刻本『校正改刻世説新語補』、釈大典『世説鈔撮』、『唐土名勝図会』後刷本の調査を実施した。最後の2点については資料収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内外における調査は、おおむね達成できた。昨年度実施できなかった早稲田大学図書館(新宿区)、故宮博物院図書文献館(台北市)などについては、今年度に実施することができた。 事例研究として選んだ石島筑波の書入本『世説新語補』(東京都立中央図書館蔵)和訓語彙について、現在なお整理中であるが、早稲田大学図書館において筑波の自筆稿本2種を披見できたのは一歩前進であると考えている。平賀中南については、澤井常四郎(『経学者平賀晋民先生』の著者)関連の資料収集、河内屋吉兵衛については、『唐土名勝図会』諸本の調査が進んだ。 『世説新語補』および『唐詩選』の明清漢籍、和刻本、通俗本については、調査によっておおむね概略を把握したと考えている。『唐詩選』関連で和刻本が2種あり、わが国では当時よく読まれたと思われる『唐詩訓解』の原本の位置づけなど、いくつか気にかかるところが出てきている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は集約の年度にあたり、2年間で積み残した課題の調査を実施したい。また、成果公表に向けた作業をしていくつもりであるが、事例に選んだ平賀中南について、澤井常四郎『経学者平賀晋民先生』の覆刻出版を計画している。 中南の国字解批判(『学問捷径』)を手がかりにして、服部南郭、石島筑波、千葉芸閣などを含めた近世中期の通俗的注釈書の位置づけについて、見解を述べたいと思っている。 前述、故宮博物院図書文献館蔵楊守敬旧蔵本『世説新語補』には中南の『世説新語補索解』が書き入れられている。芳野金陵旧蔵書『世説蒙求修辞』は、世説蒙求の2字句から約20字句までを掲出し、まま注を加えたものであるが、ここにも中南『世説新語補索解』を引く。あわせて手がかりとし、中南の『世説新語補』注釈の特質について考察したい。 河内屋吉兵衛については、都賀庭鐘など当代上方文人との交遊について調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度調査した文献の複製資料の入手支払いが年度末と重なり、所蔵機関の事務的都合等もあり、次年度使用となった。 また予定していた関西地区の調査について、他機関の調査を優先したり、日程の都合もあって、次年度に延期せざるをえなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
早期に執行手続きを行い、また、調査を実行する予定である。
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