研究課題
1.本研究の軸となるのは、地蔵寺(大阪府河内長野市)所蔵文献の調査である。所蔵文献の核となっているのは、同寺開山・惟宝蓮体(1663~1726)の所持本である。原則として、箱番号の順に全蔵書の書誌を記録する悉皆調査を行い、その結果をデータベース化する作業を行っている。ただし、蓮体(及び師の浄厳)の著作が集中する19、20箱や、特に重要と判断した資料については箱順にこだわらず調査を進めた。また、これまでに調査を終えた文献の調書を点検し、不足のあることが判明したものについては、再調査を行い補足することに務めた。2.蓮体の著作である『礦石集』に関する研究論文、「蓮体編『礦石集』と地蔵寺所蔵文献―地蔵関連資料を中心として―」(『仏教文学』39号)と「『礦石集』巻第四末7話「尊勝陀羅尼功能ノ事」について―先行作品との関わりから―」(『論集 中世・近世説話と説話集』)を発表した。前者では、地蔵寺の他の所蔵文献との関わりから、蓮体が経典講義に用いる説話をどのように構築していくのかを明らかにした。後者では、1つの説話を具体的に取り上げて、その出典、構成について分析した。その上で他作品との比較も交えつつ、当該説話の位置付けも行った。3.本研究課題の対象の1つである出版に関しては、黄檗派の僧侶・懐玉道温の著作『伽藍開基記』について調査を進めた。当該作品は、稿本である写本、及びいくつかの版が存在しており、一つの作品が出版に至るまでの過程を考える上で、貴重なサンプルであることが明らかになりつつある。
2: おおむね順調に進展している
1.地蔵寺所蔵文献の悉皆調査においては、現在所在を確認している全49箱にどのような文献があるのか、それらの冊数がどれくらいのものなのか、という点についてほぼ把握できている。そのうち書誌調査は、資料の点数としては全体の約8割を調査し得た。2.調査の済んだ資料については、目録(データベース)への転記が、点数としては全体の約4分の3完了している。3.成果の公表は、全体として順調にできていると言える。当該年度(平成26年度)の調査のうち、次年度の公表に目処が立ったものもある。
1.地蔵寺所蔵文献調査は、当該年度の調査方針を継続し、データの増補・充実を目指す。特に、整理番号が付されておらず、3分の2が未調査である秘密儀軌類について積極的に調査を進める。2.書誌調査と並行して、写真撮影を行う。これはできる限り全冊撮影を進める。3.データ入力は、当該年度の方針を継続し、調書情報のパソコンへの入力を随時行い、データベース化を進める。また、これまでの整理で遺漏が認められたものは再調査し、補足分をデータへ反映させる。4.地蔵寺以外の蓮体関連寺院の所蔵文献調査は、当該年度の調査方針を継続し、データの増補・充実を目指す。特にこの調査に関しては、他の研究者との情報交換を積極的に行う。5.図書館・研究機関所蔵の関連資料収集は、当該年度の方針を継続し、データの増補・充実を目指す。6.研究成果の一部を、当該年度と同様、学会・学術雑誌などに発表する。また、書誌調査をデータベース化したものを「地蔵寺所蔵文献目録」(仮)として、最終年度(平成29年度)に公刊することを目指す。
1.調査先の寺院の事情により、当初予定していた回数を減らし、その分を別の研究機関での調査に充てた。そのために想定していた旅費よりも少ない金額の使用となった。2.当該年度にデスクトップパソコンを購入する予定だったが、OSの操作性やサポート期限の問題を考慮し、次年度に購入することにした。
1.当該年度以上に現地での調査を充実させる。そのために旅費の使用が軸となる。また、他の研究機関に所蔵されているマイクロフィルム・紙焼写真の購入を中心に、文献資料の収集を進めていく。2.当該年度に購入を見送ったデスクトップパソコンを購入する。その他の備品・図書・電子資料等も、必要に応じて随時購入する。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 図書 (1件)
仏教文学
巻: 39 ページ: 99~112