研究課題/領域番号 |
26370248
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
山崎 淳 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (20467517)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 近世文学 / 寺院所蔵文献 / 地蔵寺 / 説話集 / 出版 |
研究実績の概要 |
1.本研究課題の軸となるのは、地蔵寺(大阪府河内長野市)所蔵文献の調査である。現時点で49箱に文献が収められていることを確認している。所蔵文献の核となっているのは、地蔵寺開山・惟宝蓮体(1663~1726)の所持本である。原則として、箱番号の順に全蔵書の書誌を記録する悉皆調査を行っている。ただし、蓮体(及び師の浄厳)の著作が集中する第19箱、第20箱や、特に重要と判断した資料(たとえば、蓮体の識語が多く残されている第39~46箱の『秘密儀軌』の一群)については、箱順にこだわらず調査を進めた。また、これまでに調査を終えた文献の調書を点検し、不足のあることが判明したものについては、再調査を行い補足することに努めた。なお、本研究以前の調査(昭和)において報告されている所蔵文献で、未確認のものが存在する。これまでの調査の経過からすると、新たな箱などが見出される可能性がある。所蔵寺院に協力を仰ぎ、現在発掘を進めている。 2.地蔵寺以外の寺院についても、蓮体関連の文献を調査した。特に香川県の覚城院では、蓮体及び地蔵寺に関連を持つ文献を発掘・精査した。その結果に基づき、それらの文献が蓮体・地蔵寺研究においてどのように有効かという点の検証を進めている。 3.岡山県の木山寺調査の成果として、近世における真言宗寺院の本寺・末寺との具体的な関係を示す資料の翻刻・解題、近世・近代の稲荷信仰と文芸作品や絵画との関係についての検証を公表した。 4.本研究課題の対象の1つである出版に関しては、『近世寺社伝資料 『和州寺社記』『伽藍開基記』』(和泉書院)を刊行した。主に『伽藍開基記』の解題を担当し、当該作品の出版研究における意義や資料的位置付け、作品の持つ問題点を示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.地蔵寺所蔵文献の悉皆調査においては、現在所蔵を確認している全49箱にどのような文献があるのかはほぼ把握できている。そのうち、資料の点数で言えば全体の9割以上の書誌を調査した。 2.調査の済んだ資料については、所蔵文献目録(データベース)への転記を進めた。点数としては全体の約6分の5が完了している。 3.地蔵寺所蔵文献と地蔵寺以外の所蔵文献との関わりについて、具体的な検証ができるレベルに材料が蓄積されつつある。 4.成果の公表は順調に進んでいる。当該年度(平成28年度)の調査・研究のうち、次年度の公表に目途が立ったもの(主に説話集に関係するもの)もある。
|
今後の研究の推進方策 |
1.地蔵寺所蔵文献調査については当該年度の調査方針を継続し、データの増補・充実を目指す。特に整理番号を付与中である『秘密儀軌』類(蓮体関係の識語が多い)について、積極的に調査を進める。悉皆調査において後回しになることが多い近代の文献にも目を配る。また、書誌調査と並行して写真撮影を行う。これはできる限り全量の撮影を進める。 2.データ入力については当該年度の調査方針を継続し、調書情報のパソコンへの入力を随時行い、データベース化を進める。また、これまでの整理で遺漏が判明したものは再調査し、補足分をデータへ反映させる。 3.地蔵寺以外の寺院の所蔵文献調査については、当該年度の調査方針を継続し、データの増補・充実を目指す。特にこの調査に関しては、他の研究者との情報交換を積極的に行う。 4.図書館・研究機関所蔵の関連資料については、当該年度の調査方針を継続し、データの増補・充実を目指す。 5.研究成果の一部を、当該年度と同様、学会・学術雑誌などに発表する。次年度は本科研の最終年度に当たるので、上記1~4を踏まえて研究成果報告書を作成する。書誌調査については、データベース化したものを「地蔵寺所蔵文献目録」(仮)として公刊することを目指す。また、特に重要と判断した資料については、画像の全量公開を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
1.当該年度の特に後半、研究課題内での優先順位が真言宗寺院の所蔵文献調査から『伽藍開基記』『元亨釈書』を中心とする禅宗文献の出版についての研究に移ったため、主たる調査先の地蔵寺(大阪府河内長野市)への調査回数が減った。 2.購入を検討していた地方史・調査報告書・図録(絶版が多い)などを古書目録やインターネット上の情報に基づき古書店へ発注したところ、すでに売却済み、あるいは所蔵を確認できないというケースが複数あった。 3.研究の優先順位変更により紙焼き写真の入手を検討する必要が生じた文献(原資料)があるが、当該年度後半の段階で、まず所蔵機関において現物全量の状態を確認する必要があったこと、マイクロフィルムなどの画像がなく、かつ大部(1点20冊以上)であり、撮影に時間がかかる類のものであったこと、そのため紙焼き写真及び必要書類の入手に時間がかかると予測されたことから、当該年度の購入を見合わせた。
|
次年度使用額の使用計画 |
1.優先順位を寺院の文献史料調査に戻すことで調査回数を増やし、その増加分の旅費に次年度使用額を充当する。 2.古書の場合、当該年度に購入できなかったものが次年度に購入可能かは保証できないので、基本的にはそれらの書籍の所蔵機関に赴き可能ならば複写をする。所蔵機関が遠方の場合はその旅費に次年度使用額を使用する。ただし、次年度前半において目録などに出品があればその書籍を購入する。 3.所蔵機関における原資料の全量確認が未完なので、なるべく早期に調査を完了し、撮影・プリントを依頼して紙焼き写真を購入する。
|