研究課題/領域番号 |
26370252
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
水谷 隆之 立教大学, 文学部, 准教授 (60454500)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 日本近世文学 / 浮世草子 / 俳諧 / 井原西鶴 |
研究実績の概要 |
研究初年度にあたる今年度は、主に西鶴の俳諧について調査・分析し、その成果の一部を論文「元禄の西鶴の俳諧―〈当流〉と〈意味〉」として発表した。本論文では、西鶴が俳諧において句の「意味」について言及した全ての例を検討し、宗因風と元禄俳諧との関係について考察した。西鶴が「意味ふくむ」と評した宗因風の俳諧は、句の表面に記されていないことがらが詞の背景に想起される句作りであり、したがってそれは、談林の飛躍的な詞の連想や「ぬけ」の手法にも、固定的な付物を除き「意味を専らに付る」(『日本行脚文集』)元禄の疎句俳諧にも、同じく適用して矛盾しない俳諧である。一方、とくに元禄期に西鶴が「意味」の深浅を問うた例では、詞に託されているべきはずの「意味」が、一句そのものの内容や背景に深みや膨らみをもたらすかどうかが問題とされており、前句の詞に頼った詞付の範囲でなされた、以前の談林の「ぬけ」の句作りとは異なっている。これは談林由来の手法や創意を、元禄疎句俳諧の作法にあわせて発展的に適用したものと考えられる。 また、西鶴の町人物浮世草子について調査・検討を行い、その一部を、「日本近世小説における商人像の形成と展開」と題し韓国高麗大学校において講演した。日本文学において本格的な経済小説を初めて創作したのは西鶴であり、その作品群はのちの文芸に多大な影響を与えた。そこで本発表ではまず、西鶴が描いた商人の特徴を概観し、近世経済小説の特徴を探る足掛かりとしたうえで、西鶴以後の町人物浮世草子に見られる、西鶴作との共通点と相違点とを具体的に確認した。後続作には、西鶴作を踏襲しながらも各作者による新たな創意が加えられている。小説として様々な工夫や趣向が凝らされる一方、次第に類型化してゆく商人像の特徴について明らかにしたものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね計画どおりに作業を遂行できた。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画のとおり研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外資料調査のための旅費を計上していたが、これを次年度以降に延期した。
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次年度使用額の使用計画 |
海外資料調査のための旅費として使用する。
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