研究課題/領域番号 |
26370252
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
水谷 隆之 立教大学, 文学部, 准教授 (60454500)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 日本近世文学 / 浮世草子 / 俳諧 / 井原西鶴 / 古注釈 |
研究実績の概要 |
研究2年目にあたる今年度は、西鶴俳諧の分析を継続するとともに、西鶴作浮世草子とその後続作に関する調査を進め、その成果の一部を用いて以下の研究発表と論文執筆を行った。 「近世前期小説の商人」と題した発表(韓国中国小説学会)では、貞享(1684-1687)から享保(1716-1735)にわたる町人物浮世草子を対象に、先行作を受容し新たな工夫をくわえて発展するさまを追った。勤勉刻苦し商売に励む商人たちの美徳を従来の教訓に則って描く一方、そこから逸脱し金銭への執着から逃れられない人間の欲心をも暴き出し、詐欺小説など様々なジャンルを産みつつ展開する過程を具体的に示したものである。また、高麗大学校での前年度の研究発表とあわせてこれを論文化した。 俳諧と浮世草子の研究成果を活かした大学での古典教育について、「俳諧と浮世草子の関係性」と題し発表した(韓国外国語大学校日本研究所国際シンポジウム)。近世初期俳諧が「雅」と「俗」の二重構造をとり、さらに両者を接続する際には複雑ながらも様々な工夫や遊びがなされていることを確認し、そうした俳諧の方法や発想を用いて創作された西鶴浮世草子の解釈の方法とそこに込められた工夫および面白さを教示する方法について論じたものである。 フランクフルト工芸博物館において資料調査を行うとともに、「中世・近世の『伊勢物語』受容」と題して発表した(フランクフルト大学)。本発表では、『伊勢物語』二四段を例に、国内外の資料を用いて中世絵巻・絵本における描かれ方を追い、近世の版本におけるその受容と展開のさまを示した。また一部の絵巻・絵本につき、当該期の古注釈書の理解をふまえて絵を読み解くことによって生まれる新たな解釈を提示したうえで、『仁勢物語』『好色伊勢物語』『懐硯』『真実伊勢物語』等の近世における『伊勢物語』のパロディ作品に共通する特徴について考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね計画どおりに作業を遂行できた。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画のとおり研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外での資料調査、学会発表のための旅費を計上していたが、その一部を次年度に延期したため。
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度に生じた次年度使用額は、海外調査のための旅費として使用する。翌年度分として請求した助成金は、当初の研究計画書の予定通りに使用する。
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