研究最終年度にあたる今年度は、西鶴や団水の俳諧・浮世草子に関するこれまでの調査・分析結果にもとづき、とくにそれらに用いられた古典の古注釈書との関係に着目し、以下の一連の論文を発表した。 論文「中世・近世の『伊勢物語』-「梓弓」を例に-」(『日本文学の展望を拓く 第四巻 文学史の時空』、笠間書院、2017年11月)においては、中世から近世初期にかけての『伊勢物語』第二十四段の解釈の変遷を追ったうえで、中世の絵巻を新たに読み解くとともに、近世における当該段の解釈と受容の様相を示し、古典注釈と浮世草子の関わりについて論じた。 論文「『好色一代男』巻四の二「形見の水櫛」考-『伊勢物語』古注釈との関係-」(『江戸の学問と文藝世界』、森話社、2018年2月)においては、『伊勢物語』第六段の当時の解釈をふまえることで、『好色一代男』巻四の二の新たな読解を試みた。 また、『源氏物語』空蝉巻を例に、中世から近世にかけての古注釈、絵巻、俗文芸との関係について考察する論文を執筆中である。 その他公表に至らなかった研究成果についても追って論文として発表する予定である。
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