研究課題/領域番号 |
26370256
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研究機関 | 大手前大学 |
研究代表者 |
盛田 帝子 (飯倉帝子) 大手前大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (40531702)
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研究分担者 |
岸本 香織 大手前大学・史学研究所, 公私立大学の部局等, 客員研究員 (40440903)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 光格天皇 / 歌壇 / 人的ネットワーク / 近世和歌 / 賀茂季鷹 / 霊鑑寺 / 妙法院宮 / 添削 |
研究実績の概要 |
近世中後期の光格天皇時代の歌壇の状況を解明するために、和歌添削資料を中心に調査・収集し、近世後期朝廷文化に占める和歌の意義や、和歌を媒介とする朝廷・門跡・公家・地下官人ネットワークの解明を目指して研究会・発表・資料調査を行った。 資料の調査収集に関しては、陽明文庫(京都市)・京都市歴史資料館・京丹後市久美浜庁舎、東京都の宮内庁書陵部・国立国会図書館等で関連資料の調査を行った。その結果、光格天皇歌壇の運営の具体的状況や人的ネットワーク、堂上歌壇と地下歌壇の関わりについての新しい資料を発見、収集することができた。 研究会に関しては、2016年2月28日、大手前大学において第2回公開研究会を行った。慶応義塾大学斯道文庫准教授 一戸渉氏の「賀茂社家岡本家文書における入木道関係資料」(ディスカッサント 盛田帝子)、明星大学准教授 青山英正氏の「孝明天皇の和歌と志士」(ディスカッサント 大阪大学准教授 合山林太郎氏)、国立高専機構 豊田高専 准教授 加藤弓枝氏の「正保版二十一代集と堂上歌壇―出版背景を中心に―」(ディスカッサント 大阪大学特任講師 勢田道生氏)、国文学研究資料館名誉教授 鈴木淳氏の「妙法院宮真仁法親王と六帖詠草の構想」(ディスカッサント 国文学研究資料館教授 神作研一氏)の発表が行われ、大阪大学教授 飯倉洋一氏の総合司会で活発な質疑応答が行われた。当日は上田秋成自画賛、富小路貞直短冊、小澤蘆庵点真仁法親王詠草等の光格天皇歌壇関係資料の展示も行われた。平成26年度に行われた第1回研究会と本研究会の成果を合わせた論集を刊行する見通しを明確にし、その準備を進めた。 またドイツ国ハイデルベルク大学からの招待講演で、近世天皇の和歌を取り上げ、その人物像や和歌の具体的解釈・意味づけ・和歌の韻律について発表した。 研究分担者の岸本香織氏は、霊鑑寺文書調査書のデータ入力を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査・収集は、前年度の遅れをかなり取り戻し、データ入力もほぼ計画に近い進行となった。昨年度に続く一般公開を兼ねての研究会も、光格天皇時代の和歌、光格天皇・宮廷をとりまく文化史、天皇像の享受、出版など、当初企画した予定通りに発表していただき、非常に有意義な議論を交わすことができた。その成果をふまえ、昨年度と今年度の公開研究会の発表を基とした論集出版へ向けての出版社との打ち合わせも進めることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
現在進めている光格歌壇の添削データ入力と、歌壇年表を完成させることで、光格歌壇の実態を明らかにするとともに、新たに出現した資料を駆使し、光格天皇を中心とする文芸ネットワークの実態を明らかにする。また国際的な学会で、その成果を問い、討論をすることで、文学研究の普遍的テーマの一つである「越境」の問題を考える手がかりとしたい。 また、光格天皇とその周辺だけではく、近世における代々の天皇の時代も視野に入れ、近世天皇歌壇史へと展開させたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
第一の理由は、今年度調査を行うはずであった東北・関東地方の調査先を、先方の都合により次年度に行う予定となったため、今年度は関西中心の調査収集を行うことになった。そのため、当初予算の予定額に達しなかった。 第二の理由は、昨年度に引き続き本研究課題の公開研究会を行い討議した結果、研究領域をさらに広げて、次年度以降に歴史・文化史をも含めた大きな問題意識を共有する論文集の刊行を行うこととなったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度行うはずであった東北地方・関東地方への調査収集を行い、資料の翻刻・データベースの作成を行う。また今年度までに蓄積したデータの分析・考察をまとめて学会発表や講演を行う。そのための旅費およびアルバイト謝金を使用する。 昨年度・今年度の2度に亘って行った本研究課題の公開研究会の内容を主とした論文集の刊行を準備する。
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