2018年度が最終年度であったが、2017年「私立大学研究ブランディング事業」の採択と現代韓国文化研究センターの設置運営が重なったため、延長申請を行った。2019年度は、近代朝鮮において活発化した新聞・雑誌から近代朝鮮文学の成り立ちに〈同化〉政策がどのような側面を見せているか、日本への抵抗運動がどのような関わりを持って朝鮮近代文学史が形成されているかについて考察を加えてみた。 1919年3月1日には独立万歳運動によって日本の朝鮮統治方法は斎藤実総督の文治政治へと転換した。これによって朝鮮の知識人たちは、20年を境に思想界に変革をなしていった。すなわち、自然主義文学や浪漫主義文学、児童文学、農民文学、労働文学、傾向文学などといった多種の文学傾向が朝鮮半島に一気に登場するのである。 これらの動向は、朝鮮総督府が推進してきた〈同化〉政策とそれにたいする抵抗運動が微妙に交差している。とくに、〈同化〉政策を進んで認めてきたのは併合下における知識人たちである。かれらが日本的な近代文学を受け入れてそれを朝鮮の近代文学化しようとするとき、日本近代文学の〈内面〉を重視した文学的動向の影響を受けることになる。 そのため、併合下における〈同化〉政策は、朝鮮の知識人の内面化と文学雑誌による啓蒙とがある意味で矛盾した様相を見せることになった。 朝鮮総督府による〈同化〉政策は、政策という手段を離れて、朝鮮においてある意味自立した形でそれがなされていくという側面を無視することができない。本課題の考察にあたっては、韓国内大学図書館が蔵している併合下のさまざまな雑誌を検証してきたので、本概要の末尾に一部を記すことにする。『開闢』『朝鮮文藝』『青年』『学之光』『新生』『新東亜』『現代評論』『東光』『新民』『大衆時代』『朝鮮文壇』(以上、朝鮮語)などである。
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