本年度の研究においては、暮鳥会寄贈資料、茨城県立図書館に保管されている暮鳥会寄託資料、及び群馬県立土屋文明記念文学館に所蔵されている資料を総合的に検討した。 原稿類の翻刻作業を進め、「新資料 山村暮鳥『雲』「序文」原稿及び関連資料(暮鳥会寄贈資料)・翻刻」(『雲』、第21号、2016.9、pp.36-45)を発表した。本翻刻は、山村暮鳥の詩集『雲』の序文の生成過程を明らかにする資料である。 同時に、暮鳥会の加倉井東氏、浅井敦氏と協力し、暮鳥会寄託・寄贈資料のデジタルアーカイブ化作業を行い、その成果をインターネット上で公開した。デジタルアーカイブは、単に画像データのみを公表するだけでなく、解題をつけて公開している。例えば、詩集『雲』の原稿については、公開した原稿の成立時期や、同作品の別稿の情報(所蔵情報、成立時期)などを記載し、資料の意義について個別に解説している。アーカイブは今後も整備し続けていく予定であるが、その最も基礎となる部分は構築できたと考える。 本年度までの作業により、各地に分散された山村暮鳥の自筆資料及び関連資料の全貌が明らかになったことは重要な成果であり、今後、デジタルアーカイブにて資料を順次公開することで一般に利用しやすい環境を整備すると共に、資料を総合的に考察した論を公表する予定である。また、本年度までの研究の結果、山村暮鳥が伝導説教に使用した「説教メモ」の重要性が再確認されたこと、説教メモについても各地に分散されていることが判明したことは、続く研究の課題を提供するものとなった。
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