研究課題/領域番号 |
26370262
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研究機関 | 東京都立産業技術高等専門学校 |
研究代表者 |
河野 有時 東京都立産業技術高等専門学校, ものづくり工学科, 教授 (70290723)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 近代短歌 / 石川啄木 / 『一握の砂』 / 動詞の終止形 / 口語短歌 |
研究実績の概要 |
今年度は、啄木短歌を中心に、動詞の終止形止めの歌について考察をおこなった。動詞の終止形止めの歌とは、例えば「東海の小島の磯の白砂に/われ泣きぬれて/蟹とたはむる」のような姿の歌である。動詞の終止形止めは、言文一致運動の進展のともない散文の文末を席捲した助動詞の「た」に対するバリエーションの一つであったが、昨年度の研究成果に明らかなように、「た」は採用しなかった近代短歌も動詞の終止形止めの方はしばしば用いたのである。動詞の終止形止めは、時間的には現在を表し、眼前描写や実況的描写と呼ぶべき性格の用例が多いが、「我」「私」の行為を「我」「私」が歌うときにおいては、その動きのみを表すという性質において、発語する「我」「私」を透過させ、その動作の主体である「我」「私」の姿を前景化させるとともに、対になる助動詞との関連性において歌集の世界に広がりを与えるように機能していることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の調査と考察を受けて(「『池塘集』考ー口語短歌の困惑ー』『国際啄木学会東京支部会会報』23号 2015年3月)、言文一致運動によって散文の文末を席捲した助動詞の「た」に対するバリエーションの一つとしての動詞の終止形止めについて、この機能を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
助動詞の「た」及び動詞の終止形止めについて考察を進めてきたが、続いてはテイル形で終わる近代短歌の表現の特質を明らかにしたい。はやく啄木短歌には「何やらむ/穏やかならぬ目付して/鶴嘴を打つ群を見てゐる」という一首があるが、このようなテイル形の歌は、その後の口語短歌運動においてしばしば見られるだけでなく、『サラダ記念日』が多用している。このことを視野に入れながら短歌表現としてのテイル形の意義を見定めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際啄木学会の大会に参加する予定であったが、開催地がシドニーであったことから、日程上の都合により参加することができなかったため。その他の費用は、特に利用することがなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費として物品の購入にあてる。
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