研究課題/領域番号 |
26370266
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岩田 美喜 東北大学, 文学研究科, 准教授 (50361051)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 演劇研究 / アイルランド研究 / 家族表象 / 視覚文化 / メロドラマ |
研究実績の概要 |
本研究は、〈長い18世紀〉の英国・アイルランド演劇における兄弟表象を渉猟することで、同時期のエピステーメーの変化と演劇との密接な関係を明らかにせんとするもので、その性格上、個人研究としては広範な文献や映像資料にあたる必要がある。そのため初年度にあたる当該年度は、2014年9月~2015年3月までの半年あまりの間、ケンブリッジ大学のウルフソン・コレッジに在籍し、資料調査に重点を絞った研究を進めた(ただし、父の死亡により2015年1月~2月に一時帰国)。 英国のコピーライト・ライブラリーであるケンブリッジ大学図書館は、英国・アイルランド文学に関する世界でも有数のコレクションを誇り、また、EEBO、ECCOといった電子テクスト・データーベースについても、他の追随を許さない充実ぶりである。これらのリソースを活用することにより、18世紀~19世紀に上演されたが現在は完全に廃れてしまった芝居の版本、当時の新聞類に掲載された同時代の劇評の数々、日本ではほとんど購読されていない演劇研究専門学術雑誌に掲載された論文等々、日本では非常に入手しにくいマテリアルを入手することができた。 これらの資料をもとに、当該研究者が2014年度中に完成させた論文は2本(1本は英語論文、1本は日本語論文)、新たに執筆に着手した論文は現在4本(1本は英語論文、3本は日本語論文)である。新たに執筆を始めたもののうち、英語論文についてはすでに審査を経て、2015年度中にレフリー付きの学術雑誌に掲載されることが決定している。ほかの3本の日本語論文についても、審査を経た上で2015年度中(1本のみ2016年度)に発表される予定である。また、ケンブリッジで得た資料を基にした口頭発表を、2015年秋に開催予定の日本英文学会中国四国支部シンポジウムにて行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究の進捗状況は、おおむね順調に進展していると言える。研究の初年度でありながら、日本語論文と英語論文を1本ずつ成果として発表することができた上、上述のようにケンブリッジで得た資料による新たな論文にも着手できて、今後の研究の方向の見通しも立っているからである(最終的には、これら個別的に発表した成果は、最終年度に発表予定の単著の下敷きとなる予定である)。 残念ながら、父の死去による一時帰国のためにケンブリッジでの在外研究がしばし中断されたため、本研究が計画以上に進展しているとまでは言いがたいものの、これは大きな研究推進の障害とはなっておらず、次年度以降の研究を進めるにあたって、特になんらの問題はないと言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の進展方策としては、引き続き日本で資料調査を続けるとともに、2014年度に着手した論文をなるべく早く成果として発表することである。一度に4本の論文に着手中というのは、個人研究としてはやや本数が多いと思われるが、本研究が演劇における幅広い兄弟表象を渉猟するものである以上、やむをえないところがる。そのため、各論文の脱稿時期をずらすなどして一つのテーマに集中する時期をうまくマネジメントし、各論文の質が落ちないように努めるつもりである。 このように、計画年度の2年目からこまめな成果発表を行う事によって、最終成果である単著の刊行に向けて、入念な準備を進めて行きたい。
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