研究課題/領域番号 |
26370276
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
廣田 篤彦 京都大学, 文学研究科, 准教授 (40292718)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 英文学 / シェイクスピア / 神話 / キルケ |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度実施したヴェニスを舞台としたシェイクスピア劇におけるキルケ表象についての研究を更に進展されると共に、今年度の研究の中心である、『アントニーとクレオパトラ』ならびに『トロイラスとクレシダ』における主に東地中海におけるキルケ像の諸相についての考察を進めた。具体的な研究実績は以下の3点の出版物と1点の口頭発表として発表された。 1.Katherine Heavey, _The Early Modern Medea_の書評を_Cahiers Elisabethans_に掲載。本書は、キルケ神話と密接な関係にあり、一部重なり合う伝統を有するメデア神話の初期近代英文学における書き直しならびに発展に焦点を当てた著作であり、本研究の遂行に対して大きな助けとなるものである。 2.論文'Two Triangles for Denmark: International Relations in _Hamlet_'を、この研究を通じて得られたシェイクスピア劇における地政学の表象の重要性を適用しつつ完成し、日本シェイクスピア協会機関紙であるShakespeare Studiesに発表。 3._The Cambridge Guide to the Worlds of Shakespeare_に執筆した、History and Historiographyのセクションの出版。 4.平成27年12月12日開催の京都大学文学研究科シンポジウムにおいて、「イングランド人と文芸共和国―モア、シドニー、ミルトン、シェイクスピア(?)」と題する口頭発表を担当。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キルケ神話とそのシェイクスピア演劇における表象の考察を通じて得られた知見を含む書評、論文等を出版すると共に、IRCL(Universite Paul-Valery)との共同研究がおおむね順調に進行している。 前年度の研究対象であったヴェニスを舞台とする劇について、継続して研究を進め、その一部を論文等にまとめ、出版に向けた作業をする一方で、本年度の主たる研究対象である『アントニーとクレオパトラ』ならびに『トロイラスとクレシダ』について、特にhybridityとbastardyいう概念を軸に研究を進展させることができた。 さらに、次年度の主たる研究対象である歴史劇の内、『ヘンリー八世』について、平成28年5月に開催される日本英文学会におけるシンポジウムでの成果発表を目指した考察を開始することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究推進方策は以下の三点になる。 1.過去二年間の研究の成果を、特に国際的な批評を受けうる論文等の形で公表する。 2.本年度の主たる研究対象である歴史劇におけるキルケ表象の考察を進める。あわせて研究成果の一部を、学会発表等の形で公表する。 3.本研究の最終年度であることから、三年間の研究成果をまとめる。この際、国際的な評価を受けうる形での公表のために、以下を実施する。a) IRCLとの共同研究を更に進め、このプロジェクトのメンバーであるフランス国立科学研究所Jean-Christophe Mayer教授を招聘して助言を受ける。b)ブリストル大学のJohn Lee博士とともにWorld Shakespeare Congressにおいてセミナーを共同で実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
1.The Cambridge Guide to the Worlds of Shakespeareの出版が2016年度に延期になったため。 2.海外からの研究者を招聘しての意見交換、ならびに国際研究集会の計画が2016年度に繰り延べになったため。
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次年度使用額の使用計画 |
1.The Cambridge Guide to the Worlds of Shakespeareが出版され、2016年度の経費にて購入することになった。 2. 2016年10月にJean-Christophe Mayer教授を招聘し、本研究課題に関する意見交換をすると共に、研究成果発表についての助言を受けることが決定している。
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