本研究では、イギリス・ロマン派文学がオリエントを包摂することによって、近代ヨーロッパ文学という革新的詩作を創出する契機を得たことを明らかにした。 具体的には、明治時代の日本というオリエントにおいて、イギリス・ロマン主義文学が受容された際に顕著になった東西の文学的、美学的差異は、イギリス・ロマン主義文学が主客の二項対立的な認識構造における主体的自律的自己をその存立要件とすることであった。しかし、キーツの詩作におけるオリエントのイメージは、ヨーロッパとオリエントが遭遇し融合する主客混交の世界観によって形成されており、その混交性こそが知の自由な循環を促す革新的詩作をもたらしたことを明らかにした。
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