研究課題/領域番号 |
26370281
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
園井 千音 大分大学, 工学部, 准教授 (70295286)
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研究分担者 |
園井 英秀 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 名誉教授 (00069709)
平田 耕一 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (20274558)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 英米文学 / 西洋思想史 / 宗教 / 哲学 / 西洋科学史 |
研究実績の概要 |
本研究は18世紀から20世紀までのイギリス文学における国家意識構築と宗教的主題との関連を検証し、その特質を定義するために、文学的記述とイギリス社会思想的資料の通時的並びに共時的分析を行い、イギリス国家意識構築とイギリス文学の哲学的思想的特質の関係を明らかにする。イギリス文学における宗教的主題の変容とイギリス国家意識構築の関連を(科学及び社会変革と宗教思想の関連、教養文化の発達などの関連を中心に)文学的社会的資料分析を通して明らかにする。本年度は特に以下の課題について分析した。 (1)18世紀イギリス文学の宗教的主題と社会的政治的変革の関連における国家意識形成の傾向を検証するため、特に社会的変革と国家意識形成またそれに関連する宗教的思想の影響関係が顕著であったロマン主義時代を中心に検証した。ロマン主義文学における基本的な非国教主義思想とアングリカニズムの相克またその宗教的思想とイギリス国家意識形成との関連を、宗教的資料、政治的社会的資料、哲学的思想を中心に分析し、18世紀イギリス文学の文学的主題の宗教的性質とイギリス国家概念形成との関連を検証した。 (2)19世紀イギリス文学においては、特に文学的主題とイギリス国民意識との関連を科学また社会思想変革と宗教思想の影響関係を分析し、イギリス国家意識確立の思想的特質の一部を検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記課題(1)及び(2)研究に必要な文献資料収集及びそれらの分析を研究代表者が中心に行った。なお、思想的分析については研究分担者園井英秀九州大学名誉教授、研究協力者ド・モンフォール大学、Professor Tim Fulfordの協力を得た。また課題(2)における科学的コンテクストの分析については平田耕一九州工業大学教授の検証協力を得た。具体的な分析内容は以下の通り。 課題(1)(イ)コールリッジ、サウジー等を中心とする文学的記述における宗教的哲学的思想と、18世紀イギリス社会における社会的政治的状況と宗教的傾向を分析し、イギリス国民意識形成の過程を検証した。(ロ)18世紀イギリスの社会思想(バーク、ヒューム等)とヨーロッパ近代社会における哲学的思想(ヴォルテール、ルソー、カントなど)の影響関係の分析を行い、イギリス社会思想の特質を検証した。(イ)及び(ロ)の相互的検証を行い、イギリス文学の宗教的思想の性質と国家意識形成との関連を分析した。 課題(2)(イ)19世紀イギリス社会における科学的発展の状況とイギリス文学の宗教的道徳的主題の関係を中心に分析した。具体的には、ジョージ・エリオット、マシュー・アーノルド等の宗教的道徳的主題とイギリス国家意識の関連の解釈を社会的政治的資料の分析を通して行い、イギリス社会思想における宗教的影響力と国家意識の関係を明らかにした。(ロ)C.ダーウィンの進化論分析を中心にイギリス社会における科学の発達と伝統的宗教観の相克を検証した。(ハ)(イ)、(ロ)の分析結果を総合的に検証し、19世紀イギリス社会思想における宗教と国家意識の関係について検証した。 以上の分析研究は国内大学図書館及び大英図書館、ボドリアン図書館、その他のイギリス国内図書館施設での調査研究を中心に行った。またこの領域に関する国内及びイギリス開催学会における研究発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は今年度の分析結果をふまえ、 ①上記課題(1)における18世紀イギリス文学とイギリス国民意識形成における宗教的分野の発展的分析を進める。②上記課題(2)における前年度研究の発展的分析として19世紀イギリス文学の宗教的主題と社会的政治的思想との関連を検証し、19世紀イギリス国家意識の基盤的性質について分析し、まとめる。具体的には、以下の観点についての分析を中心に行う。 (イ)ジョン・スチュアート・ミル、ベンサムなどの記述におけるイギリス社会の社会的政治的思想検証と解釈及びイギリス国民意識との関連を検証する。(ロ)マシュー・アーノルドを中心としたイギリス社会思想の宗教的要素とイギリス国家意識構築の関係を検証する(ハ)(イ)及び(ロ)の検証結果と前年度までの研究結果を相互検討し、19世紀イギリス文学の宗教的思想の特質についてまとめる。③課題(3)20世紀イギリス文学においては、宗教的主題と近代的コモンセンスの性質を中心に分析する。具体的には、世紀末以来の宗教的懐疑の主題の変容を、ハーディー以降、ジョージ王朝詩から戦争詩、また1960年代フィリップ・ラーキンを中心とする20世紀後半文学における不可知論 (agnosticism)との関連において分析する。また60~70年代文学における宗教的主題、アングリカニズム及びカトリシズムの攻勢等についての検証を通し、20世紀文学におけるイギリス文学の宗教的性質を分析する。 なお、上記課題のイギリス社会思想傾向に関する専門的分析のため九州大学名誉教授園井英秀、ド・モンフォール大学、Professor Tim Fulford、また科学的発展の分析の為、平田耕一九州工業大学教授の研究協力がそれぞれ必要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の遂行上、上記課題(1)及び(2)に関する18~19世紀イギリス文学と思想的コンテクストの分析及び課題(2)の科学的発展と文学の関係においてより詳細かつ広範囲の資料分析収集が必要となったため、関連する研究遂行のため研究費(旅費、物品費、謝金、その他)を繰り越す。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画通り進める。次年度は19世紀から20世紀イギリス文学と思想的コンテクストの検証を文学、歴史、宗教、科学的資料分析を中心に多角的に行うので国内外の関連する研究施設における資料収集分析及び本領域を対象とする学会発表及び論文発表を予定する。そのための研究費(旅費、物品費、謝金、その他)も研究計画通り実行するよう努める。
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