研究課題/領域番号 |
26370283
|
研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
伊東 栄志郎 岩手県立大学, その他部局等, 准教授 (70249241)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 英米文学 / ジェイムズ・ジョイス / オリエンタリズム / ポスト・コロニアリズム / 東西交流史 / ジャポニスム / シノワズリ / (反)ユダヤ主義 |
研究実績の概要 |
・「ジェイムズ・ジョイスと東アジア中心の脱欧入亜論」の初年度なので、まず東アジアが英国文化に与えた影響を研究した。『片平五十周年記念論文集 英語英文学研究』(金星堂 2015)に掲載された英文論文「Joyce and the Jews in Two Irish Cities」は、英国ベルファストで開催されたIASIL年次研究大会の発表原稿を加筆修正したものである。アイルランドを代表する二大都市ダブリンとベルファストがどのように発展してきたか、それにユダヤ人移民がどのように関わってきたかまで、中国原産茶の輸入・セイロンでの栽培成功・飲茶の習慣が庶民に根付くまでの歴史をポスト・コロニアル的視点から論じたものである。昔からダブリンの人口は多いが、工業都市であるベルファストは19世紀初頭英国産業革命に伴い、急速にリネンや造船業を中心に発展し、大飢饉のときはアイルランドにおける難民の受け入れ先になっていたこと、19世紀末からは英領セイロンで茶の栽培が成功すると、リプトン卿がベルファストに紅茶商会を置き、アイルランドでも英国本島同様に飲茶の習慣が普及したこと、それにユダヤ人たちは積極的に関わり、富を得たこと、それがジョイス作品で揶揄されていることなどを論じた。 ・6月オランダのユトレヒト大学で開催された国際ジェイムズ・ジョイス・シンポジウムにおいて、「The Great War and Modernism: Joyce among Orientalists」と題して第1次大戦期に、いかにジェイムズ・ジョイスを含むモダニストたちにオリエンタリズムが影響したかを発表した。 ・10月早稲田大学で開催されたIASIL-Japan年次大会で、同大学卒業生村上春樹とジョイスを世界文学の視点で「Joyce to the World and Murakami to the Globe」と出して発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は活字になった論文数が1本だけではあるが、論文集『片平五十周年記念論文集 英語英文学研究』(金星堂 2015年3月)に収められて出版された。それ以外に合計2回、6月にオランダのユトレヒト大学開催の国際ジェイムズ・ジョイス・シンポジウムで口頭発表し、10月に早稲田大学開催の国際アイルランド文学学会日本支部(IASIL-Japan)でも口頭発表している。これら2つの発表論文に関しても活字にするべく準備中である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も当初の予定通り、国際ジェイムズ・ジョイス・シンポジウムと国際アイルランド文学学会(IASIL)で学会発表し、その成果をまとめて活字にする、ということを軸に本研究「ジェイムズ・ジョイスと東アジア中心の脱欧入亜論」を進めていく。それと同時に中国、韓国をはじめとする東アジア諸国でも機会があれば関連学会に参加する予定である。 ちなみに今年度2015年6月には韓国江南大学校で開催される韓国ジェイムズ・ジョイス学会、7月には英国ヨーク大学開催のIASIL2015年次研究大会で発表することが決まっている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度使用額は適切に請求した金額を有意義に当該研究費として役立てた。年度末になり、残金が少額ながら生じたため、所属大学科研費事務担当者と相談したところ、無理に慌てて0とする必要がないと言われたので、そのまま残した次第である。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額5,440円は、科研費ハンドブックを随時参照しながら、有意義に適切に使用する予定である。
|