研究課題/領域番号 |
26370283
|
研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
伊東 栄志郎 岩手県立大学, 高等教育推進センター, 教授 (70249241)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ジェイムズ・ジョイス / 東アジア文化 / 日本語 / 中国語 / モダニズム / オリエンタリズム / 英米文学 / 東西交流史 |
研究実績の概要 |
「ジェイムズ・ジョイスと東アジア中心の脱欧入亜論」の四年目の本年は、日本語と日本文化、中国語と中国文化がどのようにジョイス作品に描かれているかについて考察した。4月から9月までサバティカルをいただき、ジョイスの母校ユニヴァーシティ・カレッジ・ダブリンを拠点として欧米の各種学会や研究会にできるだけ出席し、研究発表した。6月はトロント大学で開催された北米ジョイス学会で「中国語表記におけるジョイシアン・ディアスポラ」を発表した。7月はシンガポールの南洋理工大学で開催された国際アイルランド文学学会(IASIL)で「イェイツ、ジョイスそしてヒーニーにおける日本の影響」を発表した。8月はチューリッヒ・ジョイス・ワークショップで「『フィネガンズ・ウェイク』における日本語と中国語のポストスクラプト」を発表した。11月には、韓国東國大學校で開催された国際比較文学学会に招待され、「デジタル・ヒューマニティーズにおけるジェイムズ・ジョイスと日本文学」という題目で講演した。これらの発表原稿は準備が出来次第、順次活字にする予定である。 『片平』第53号にロンドン大学で開催された第25回国際ジェイムズ・ジョイス・シンポジウムにおいて発表した原稿「ジョイス、黒澤、『スター・ウォーズ』モノミス(英雄の旅)」を加筆修正したものを掲載した。『スター・ウォーズ』原作者のジョージ・ルーカスが黒澤明の『隠し砦の三悪人』のプロットや登場人物設定などを援用した宇宙チャンバラ劇を着想したとき、ジョイス研究で名高い神話学者ジョセフ・キャンベルの『千の顔を持つ英雄』からモノミスという概念で物語に普遍性と深遠さを付加したことは有名だが、モノミスという語がフロイトの精神分析論を読んだジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』に由来する用語であり、そのモノミスという概念でジョイス作品も『隠し砦の三悪人』も分析可能であることを論証した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は活字になった論文は金星堂から出版された1本のみだが、それはサバティカル研修で半年間日本を離れてアイルランドに滞在したからである。アイルランドでは新しい資料も多く入手できたが、代わりに普段参照可能な慣れ親しんだ資料や参考書が手元になかったため、その環境の変化は論文執筆には支障が少なからずあった。ただ、学会発表も4箇所で行っているため、その発表原稿を今後順次活字にしていくことを考慮すれば、おおむね順調に進展していると言えるのではないだろうか。 ジェイムズ・ジョイスの研究は、一部の例外を除いて、ほとんど欧米中心で行われ、欧米の学者たちは当然ジョイスを自分たちの視点でしか論じていない。日本文学や中国語の影響を調べて研究発表するのはまだまだ希少価値があると言えるだろう。その証拠にどこの学会に出かけても多くの人々がかけつけて熱心に聞いてくださるのである。それはとてもありがたいことであり、今後も国際学会の発表を中心に研究していきたいと願っている。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画どおり、国内外の関連研究会等に積極的に参加・発表しながら、国際ジェイムズ・ジョイス協会(本部はアメリカのタルサ大学)と国際アイルランド文学学会(International Association for the Study of Irish Literatures: IASIL)を中心に学会発表し、その成果をじっくり時間をあけて活字にしていく予定である。 平成30年度は、研究最終年度なのでまとめの作業を中心に行う。また、資料収集、資料等のデジタル化もどんどん進めていきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
サバティカル研修により、半年間旅費を除き、研究書籍等の購入をなるべく控えていたことが挙げられる。仮に書籍を購入しても(船便が使えず航空便だけになってしまう)アイルランドから帰国する際に輸送料がかなり高額になることを危惧したためである。次年度が研究最終年度であるので、その成果を着実にあげるために計画的に科研費を使用する予定である。
|
備考 |
(1)と(4)はともかく、(2)と(3)は学会公式サイトのため、一定期間が過ぎればサイトは閉鎖される。
|