本研究は、英米を中心とした大量死を描く演劇の系譜をたどることで、大量死の脅威に対する「記憶の記録装置」としての演劇の可能性を検証することを目的とした。大量死の脅威に常にさらされている現在、古くは第二次世界大戦、最近では東日本大震災による大量死の記憶と対峙すべき日本人研究者としての視点から、演劇の社会的・文化的・倫理的役割を再考することは喫緊の課題である。さらに自然災害による大量死に関する演劇の研究が少ないなか、大量死と大量虐殺双方を視野に入れ、広範囲に渡る作品を研究対象とし、研究発表および論文をとおして、大量死の脅威に抵抗する演劇独自の想像力の可能性を明らかにした。
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