1960年代後半以降、約30年に渡って3,600人以上もの犠牲者を出した北アイルランド紛争は1998年の「ベルファスト合意」を以て一応の解決をみた。しかし、プロテスタント系住民ととカトリック系住民の対立は続き、現在でも暴動は絶えない。また、両宗派はすみ分けし、当地は依然として分断社会である。 本研究は、民族、国家、帰属意識、宗派などの諸問題が複雑に絡みあって生じた紛争と対立の経緯を分析するとともに、当地で生み出される詩作品やミューラル(壁絵)を、歴史・社会・政治的文脈を踏まえながら紹介、読解し、紛争後の社会の現状と、分断社会のなかで果たす詩的想像力の役割などについて考察した。
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