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2014 年度 実施状況報告書

英国ミドルブラウ文学・文化に関する学際的研究

研究課題

研究課題/領域番号 26370293
研究機関上智大学

研究代表者

松本 朗  上智大学, 文学部, 准教授 (00365678)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワードミドルブラウ / ハイブラウ / モダニズム / フェミニズム / ポストフェミニズム / 戦間期 / ジェンダー
研究実績の概要

2014年度は、ミドルブラウに関する研究書と関連する映画DVD等の資料を収集・分析することによって、英国ミドルブラウ研究の先行研究の状況を整理・把握し、戦間期イギリスのモダニズム文学、定期刊行物におけるジャーナリズム、および映画の分野において、ハイブラウとミドルブラウによる「ブラウの戦い」が見られる文化的状況をかなり明確に理解することができた。それを踏まえて、第86回日本英文学会大会(2014年5月24日(土))で登壇したシンポジウム「ミドルブラウの挑戦」では、1922年にイギリスで発刊された雑誌Good Housekeepingの主に1930年代の記事を分析し、同誌上でVirginia Woolfなどハイブラウの作家と、Winifred Holtby, Vera Brittainなどミドルブラウ寄りの作家による、女性の貧困の問題と女性の職業に関する論争がおこなわれていたことを明らかにした。また、シンポジウムの他の登壇者と有益な意見交換をすることができた。今後、このテーマについてはさらにリサーチを進め、論文化する予定である。
また、2015年2月末にリサーチをおこなったNew York Public Libraryでは、絶版となっているVera Brittainの著作を入手し、Virginia WoolfなどCambridgeを中心に発信するハイブラウのモダニズム作家に対し、BrittainがOxford大学Somerville College出身の若手作家がジェンダーや女性による文学の問題について論争を仕掛けていることを知ることができた。この問題については、引き続き資料分析を継続する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2014年度夏にはイギリスに研究調査のための出張にでかけることができなかったため、戦間期のイギリスの定期刊行物に関する調査は若干遅れ気味だが、2015年2月にNew York Public Libraryにおいて、現在では絶版となっているVera Brittainの著作を入手することができたため、リサーチの順序に前後はあるものの、研究はおおむね順調に進展していると言える。また、資料の分析も順調に進めることができているし、現在までに明らかにできていることについて論文を執筆する準備も進めている。
ミドルブラウ研究会では、ミドルブラウという問題設定について、同時代の移民や帝国の問題などの視点が欠けているなど、有益な指摘もなされた。これについては、南アフリカで執筆活動や政治的活動を行ったWinifred Holtbyの思想を明らかにすることで、欠けている視点を補うことができるのでは、と考えている。

今後の研究の推進方策

引き続き、イギリスあるいはアメリカ合衆国の図書館で、定期刊行物に関する調査を進め、戦間期イギリスにおけるジェンダー、フェミニズム、モダニズム文学の問題に、ミドルブラウという視点を導入することによって、先行研究では明らかにされてこなかったミドルブラウ文学の国際性と階級横断性を明らかにし、ハイブラウのモダニズムとミドルブラウ文学の間の「ブラウの戦い」を跡づけることができると考えている。
なお、戦間期の「ブラウの戦い」にみられるジェンダーとフェミニズムの問題は、Oxfordの女子大とCambridgeの女子大、世代間の確執など、当初考えていたよりさらに重要な広がりをもつことがわかりつつある。これは、現代のポストフェミニズム、第三波フェミニズムの問題と繋がる問題でもあり、こうした問題意識をもちながら、戦間期のモダニズム文学に新たな光を当てることを試みるつもりである。

次年度使用額が生じた理由

2014年度は、私的理由(家族の病気)により、夏期にイギリスにリサーチ出張にでかけることができなかった。それが、「次年度使用額(B-A)」が生じた理由である。

次年度使用額の使用計画

2014年度夏期に行うことができなかったイギリスへのリサーチ出張は、2015年度以降に行う予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] デジタル・アリス――チャールズ・バベッジとコンピューター言語2015

    • 著者名/発表者名
      松本朗
    • 雑誌名

      ユリイカ

      巻: 47: 3 ページ: 148-159

  • [雑誌論文] 炭鉱娘とアメリカの交渉――『フラガール』、フェミニズム、労働の歴史2015

    • 著者名/発表者名
      松本朗
    • 雑誌名

      アメリカ・カナダ研究(The Journal of American and Canadian Studies)

      巻: 32 ページ: 25-43

    • 査読あり
  • [雑誌論文] プログレッシヴ・ミドルブラウ――Winifred Holtbyの挑戦2014

    • 著者名/発表者名
      松本朗
    • 雑誌名

      日本英文学会 第86回大会Proceedings

      巻: 9 ページ: 79-80

  • [学会発表] ルイス・キャロルについての一考察2014

    • 著者名/発表者名
      松本朗
    • 学会等名
      2014年度東京都立大学・首都大学東京英文学会
    • 発表場所
      首都大学東京南大沢キャンパス
    • 年月日
      2014-12-13
    • 招待講演
  • [学会発表] プログレッシヴ・ミドルブラウ――Winifred Holtbyの挑戦2014

    • 著者名/発表者名
      松本朗
    • 学会等名
      日本英文学会第86回大会 Symposia 第4部門
    • 発表場所
      北海道大学
    • 年月日
      2014-05-24
    • 招待講演

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公開日: 2016-05-27  

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