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2016 年度 実施状況報告書

英国ミドルブラウ文学・文化に関する学際的研究

研究課題

研究課題/領域番号 26370293
研究機関上智大学

研究代表者

松本 朗  上智大学, 文学部, 教授 (00365678)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワードハイブラウ / ミドルブラウ / イギリス映画 / フェミニズム / 定期刊行物 / ジェンダー
研究実績の概要

28年度には、Good Housekeeping、School Mistress、および、Close Upといった定期刊行物の1920年代、30年代の記事を分析した。平成28年9月に出版された拙論は、Good Housekeeping誌において、ハイブラウのモダニスト作家Virginia Woolfと、ミドルブラウの作家Winifred HoltbyおよびVera Brittainがブラウの戦いを展開しつつ、不況期の田舎のイングランドについて議論していたことを明らかにした上で、ウルフの小説Between the Acts(1941)とホルトビーの小説South Riding(1936)が、国際的な見地から田舎のイングランドが抱える問題を表象していることを論じた。
29年度に刊行予定の拙論では、従来ハイブラウな映画雑誌とみなされてきたClose Up誌において、Dorothy RichardsonやBryherといった女性作家が、ミドルブラウの見地からブラウの戦いを仕掛けていたことを明らかにした上で、Holtbyの小説を原作とする映画South Riding(1938)が、ブラウの戦い、および、イギリス映画産業とアメリカ映画産業の間の戦いを踏まえつつ、イギリス映画の再定義を試みる、「コスモポリタン・ミドルブラウ」的映像テクストであることを論じている。
この2本の拙論においては、本研究の目的である、「20世紀前半の英国ミドルブラウの文化・文学が有した革新性と国際性を、HoltbyとBrittainのジャーナリズムにおけるエッセイや小説やその映画化作品分析し直すことによって、明らかにする」という目的が達せられている。特に、英国ミドルブラウ文化において階級横断性が見られると同時に、あるべき社会主義が検討されている様相もあぶりだすことができたことは有益であった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成28年度には、収集した定期刊行物の資料を順調に分析し、また、論文を執筆することによって、本研究を順調に進めることができた。

今後の研究の推進方策

平成28年度は、Winifred Holtbyのジャーナリズムにおける仕事と小説を分析することによって、英国ミドルブラウ文化に見られる階級横断性と国際性、および社会主義に関する関心を明らかにすることができたが、Vera Brittainに関する資料の分析や小説の再検討については、十分に行うことができていない。平成29年度は、カナダのマクマスター大学に所蔵されているBrittainの資料(雑誌や新聞に執筆した記事)を入手し、分析することによって、Brittainが英国ミドルブラウ文化の中で果たした役割を明らかにしていく。その研究成果の一部は、平成29年6月にイタリア、ミラノで開催される20世紀の定期刊行物に関する国際学会で発表することになっている。
また、平成26年度から続けてきた「ミドルブラウ研究会」で論文集を中央大学出版から平成29年度中に出版する予定である。現在は、査読を行っている最中である。

次年度使用額が生じた理由

28年度には、インターネット経由で可能な範囲の資料収集は継続して行うことができたが、学務および家庭の事情が重なり、国際学会で発表したり、海外で資料収集を行ったりすることができなかった。

次年度使用額の使用計画

29年度には、6月にミラノの定期刊行物をテーマとする国際学会で、12月にはベルギーで開催される女性知識人の活動に関する国際学会で、研究発表をする予定である。あわせて、未収集の資料もロンドンの大英図書館やBritish Film Instituteで収集する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 「“Yes, you’ve wonderfully good taste, Ernest.” ――『真面目が肝心』とガール・カルチャー」2016

    • 著者名/発表者名
      松本朗
    • 雑誌名

      『オスカー・ワイルド研究』(日本オスカー・ワイルド協会)

      巻: 15 ページ: 55, 69

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [図書] 『終わらないフェミニズム――「働く」女たちの言葉と欲望』2016

    • 著者名/発表者名
      日本ヴァージニア・ウルフ協会(河野真太郎・麻生えりか・秦邦生・松永典子・大道千穂・加藤めぐみ・松本朗・矢口朱美・英美由紀・大田信良・伊藤節)
    • 総ページ数
      346 (59-86)
    • 出版者
      研究社

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公開日: 2018-01-16  

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