本研究課題は、近代初期イングランド復讐劇による民衆心性への影響を明らかにすることを目指すものである。成果としては以下2点がある。1.数多く制作されジャンルを形成した復讐劇作品群が共有していた常套的様式の表象としての作用とは、ルネサンス的という文化的ムーブメントに位置付けて検証すると、個人主義的な自己のアイデアを表現するものと考えられる。復讐劇は、個人の概念を人々に明示する点で、近代的概念の媒体といえる。2.イングランド社会に見られた、演劇以外の他の芸術や娯楽、媒体における表象と復讐劇の関連性を見出し、それらの表象が、特に美学的・倫理的側面で、人々の近代的心性の形成に影響力を持ったと結論づけた。
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