ニュージーランドの平和・共生の思想形成に、文学は大きな役割を果たしてきた。20世紀初頭から、社会に対する様々な問題提起を行ってきた白人作家たちに、1970年代から著作を開始するマオリ作家たちが返答する。本研究は、文学を通じての両者の文化的な対話の内に、弁証法的な発展を読み取る試みである。白人作家を代表するキャサリン・マンスフィールドが創始した、社会的な境界線を消し去ろうとする「命の文学」を、マオリ作家を代表するウィティ・イヒマエラが、マオリの「マウリ(命の原理)」の概念と結び付け、どのように継承し、発展させていったのかを軸にして、ニュージーランドが共生社会を構築していった過程を明らかにする。
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