本研究は、太平洋文学作品が提示する伝統文化への態度を中心に、20世紀の太平洋地域における「地方性」の意義の変遷を検証した。1990年代以降、作家たちはそれまでの「西洋ではない」ということで規定される周縁としての太平洋世界ではなく、より積極的な意味を付与した一地方としての太平洋像を模索し、西洋対非西洋という言説の枠を越えようとする。本研究では、19世紀末にサモアからヨーロッパに向けて「太平洋」を発信したR. L. Stevensonを起点に、20世紀における大衆文学作品や映画を経て、1990年代以降の作品が提示する西洋と非西洋という枠組みの超克をたどり、20世紀の太平洋の地方性を明らかにした。
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