本研究は、(1) アメリカのモダニスト詩人 Ezra Pound の詩と詩論に見られる「アメリカの建国の父祖」、特に、Thomas Jefferson と John Adams の評価の意味を、彼の「高利」批判との関係から明らかにすること、(2) 彼らを儒教およびファシズムに結びつけようとするパウンドの試みを「符号」の観点から考察すること、(3) それに伴う彼の創作原理の変化を示すことを目的とする。 平成29年度には、平成28年度に続き、パウンドのジェファソンについての言及に関する文献調査を行うとともに、アダムズをテーマとする Adams Cantos およびその原テクストである The Life and Works of John Adams の文献調査を行った。また、これらの作業に加え、パウンドのジェファソンおよびアダムズの評価と彼の儒教への傾倒との関係について検討するために、Chinese History Cantos およびそこに見出される翻訳の実態についての再検討も行った。 これらの調査の研究成果は未整理であるが、平成29年5月には、日本英文学会全国大会(於静岡大学)でのシンポジウムにおいて、パウンドを含む20世紀の詩人の詩論に関する報告を、同6月には、国際エズラ・パウンド学会(於ペンシルヴァニア大学)にて、パウンドの翻訳に関する口頭発表を行い、同11月には日本エズラ・パウンド協会大会でシンポジウム講師を務めた。また、Oxford Research Encyclopedia of Literature に、戦前の日本におけるパウンドと T. S. Eliot の受容に関する項目を執筆した。
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