研究課題/領域番号 |
26370318
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
大池 真知子 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (90313395)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 文学 / アフリカ |
研究実績の概要 |
これまで収集したメモリーブック(HIV陽性の親が子どもに宛てて家族や自分について書く冊子)を全冊精読した。その結果、以下のことが明らかになった。 (1)多くのメモリーブックに共通する特徴がある。周囲に対する感謝と自己に対する誇りである。書き手は、家族、友人、支援団体に支えられていることに感謝すると同時に、自分が役割を果たしていることを誇る。ただし、HIVについては、書き手によってかなりのばらつきがある。事実関係を述べるだけのこともあれば、サバイバーナラティブを謳いあげることもある。悲観的な描写もある。 (2)男の書き手は、事実を正確に述べる一方、感情を表現することは少ない。しかし、子どもについて書くときには、父親としての慈しみが表現されることがある。 (3)女の書き手の感情表現は、非常に精緻なものもあれば、掘り下げが不十分なものもある。教育レベルによって記述力が異なるためだと思われる。精緻な記述は、伝統的な文学分析の手法で分析できるが、掘り下げ不足の場合、インタビューで補い、書き手の心に迫る必要があるかもしれない。伝統的な手法で分析して、どこに限界があるのかを明確にすることで、文学と文学研究の限界が明らかになる可能性がある。 以上の考察を受けて、メモリーブックをテーマとする書籍を出版することを計画した。8人程度の書き手を選び、メモリーブックを精読し、彼女たちの経験を浮かび上がらせる内容を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度計画していた海外での調査は、治安の不安により断念した。しかし入念にメモリーブックの精読を行い、調査項目を絞り込んだ。その結果、すでに28年5月に比較的短期間で調査を行うことができている。
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今後の研究の推進方策 |
27年度に行う予定だった調査は、すでに28年5月に行っている。28年度中は、さらなる海外調査は行わない予定である。おもに日本で研究発表を行い、フィードバックをもらい、内容をまとめて著書を出版したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、3月に海外での調査を行う予定だったが、調査地のウガンダで2月から3月まで選挙が行われ、治安が不安定であったため、渡航を断念した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に調査を行う予定とし、実際、5月の上旬に行っている。次年度の海外調査はこれにとどめ、旅費はおもに、日本での研究発表などで他の研究者からのフィードバックを受けることに使用する予定である。
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