本研究では、ウガンダで書かれている「メモリーブック」を例に、グローバル時代の草の根の文学について考察した。メモリーブックとは、HIVとともに生きる親が、子どもに宛てて、家族について記す小冊子である。書き手の大半は、初等教育未修了者を含む農婦である。 メモリーブックは三つに大別される。1.村の日常が素朴な言葉で書かれたもの。エイズの苦しみはあまり書かれず、家族団欒、畑仕事、教会や社会活動が書かれる。2.病の苦しみや家族の軋轢などが、記述のなかにつなぎとめられているが、内面の掘り下げは不十分にとどまるもの。3.内面の苦悩に言葉が与えられているもの。10年以上の教育を受けた書き手に多い。
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