研究課題/領域番号 |
26370319
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
松島 欣哉 香川大学, 教育学部, 教授 (20165814)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 国民文学 / 自己修養 / 国家主義 |
研究実績の概要 |
2014年10月3日に北海道札幌市の北星学園大学で開催された、日本ソロー学会2014年度全国大会のシンポジウムにおいて、「コンコードの作家たちと外国文学」とのテーマのもと、「William Ellery Channing のアメリカ文学論」を発表した。 この発表では、チャニングの国民文学論(1830)は、1820年にSydney Smith が『エディンバラ・リヴー』誌上で投げかけた「誰がアメリカの本など読むものか」との難詰に代表される、イギリス人によるアメリカ人の知的・文化的不毛批判に対し、アメリカ人が実際的知識の集積を誇ることで対抗しようとしている点に異議を投げかけ、アメリカの知的発展の処方箋を示した点で、アメリカの国民文学意識形成における陸標となっていることを解明した。チャニングの国民文学論をより広い文脈の中で論じた点にこの論考の意義がある。この発表は、追加・修正を加えたあと、2015年9月に発行予定の『ヘンリー・ソロー研究論集』(日本ソロー学会)第41号に投稿し、現在査読中である。 また、チャニングの“Self-Culture”(1839)を主に取り上げ、「ウィリアム・エラリー・チャニングの『自己修養論』」に纏めた。 「国民文学論」においてチャニングは、アメリカの知的・文化的発展を招来するには指導者としての知識人の育成が欠かせないと主張したが、「自己修養論」においては一般民衆の知的・道徳的向上の必要性を説いた。彼の「自己修養論」が、牧師の会衆に向けて行った自己向上の説教というより、アメリカ人全体の知的・文化的向上の必要性を説いた国家主義的発言であることを明らかにした点に、本論の意義がある。この論考は、2015年5月に発行予定の『香川大学教育研究』第12号に掲載予定で、現在印刷中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の1年目は、チャニングの「国民文学論」と「自己修養論」とを主に対象として、彼の文学意識を解明することに当てていたので、その点では目的を達成したが、彼の国家主義的思考の分析には深くは入れなかった。その点で、おおむね順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の2年目は、Orestes Brownson の“American Literature”の評論、エマソンの“Literary Ethics”講演に対する批評を読み、彼の文学意識を探る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
為替の変動により、書籍の代金が予想を上回り、購入計画していた書籍の代金と異なったことに加え、残った金額では購入できる書籍がなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の物品費と合算して、書籍の購入に充てる予定である。
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