2017年4月に米国カリフォルニア州サンディエゴにおいて開催されたPCA/ACAの第47回年次研究発表大会で口頭発表した。同年9月にマサチューセッツ州、ボストン大学のアーカイブで劇作家 ジョン・パトリックの資料を収集、また、ミシガン州、モンロー郡歴史博物館で、作家ヴァ―ン・スナイダーの資料を収集した。それらの資料を分析して、2018年3月に米国インディアナ州インディアナポリスで開催されたPCA/ACA年第48回年次研究発表大会で学会発表を行った。 3本の論文と1本の研究ノートを沖縄県内の学会や研究所の機関誌、勤務している大学等の紀要に掲載した。また、過去4年間の研究の集大成として研究報告書を作成した。 ヴァ―ン・スナイダーの The King from Ashtabula (1960)を分析した論文は、この小説を「第二の沖縄物語」として位置づけ、スナイダーの作品における沖縄文化・社会の影響を論じた。この小説の本格的な研究論文はこれまで皆無だったので、基礎的研究としては十分に意義深い研究成果と言えるだろう。また、沖縄の米軍統治時代を扱った作品を分析した論文では、スナイダー及びクーパーの両作者とも米軍政府に批判的な視座を持っている共通性とフィクションへのアプローチの仕方が異なることを指摘し、両アプローチとも日本復帰以前の沖縄の状況を描写するのに有効であると結論づけた。また、Katsuren 及び Gift of a Blue Ball の両作品をアメリカ人へ向け「観光文学」という観点から分析した論考も発表した。両小説とも在沖米軍基地の政治性をできるだけ排除するアプローチをとっているが、沖縄の文化・歴史への深い理解・愛情が明確に表現されており、アメリカ人作家には、沖縄題材にする際のジレンマ(複雑な感情)があるのではないかと結論付けた。
|