研究課題/領域番号 |
26370323
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研究機関 | 福岡女子大学 |
研究代表者 |
向井 剛 (向井毅) 福岡女子大学, 文学研究科, 教授 (40136627)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 狐物語 / 書誌学 / 書物史 / 初期印刷本 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、中世後期から18世紀にかけて広くヨーロッパに流布し、様々なジャンルで受容された<狐物語群>のうち、1.中世オランダ語から翻訳・受容された英語『狐物語』(Reynard the Fox)の本文生成と派生のプロセスを解明し、ステマを確定すること、2.各印刷・編集者による本文と書物のつくりを社会・文化的文脈に位置づけ、受容史の観点から解釈することである。 本年度(計画の2年目)は、(1)ピンソン第2版のテクスト編集の解明と(2)Allde第2版を経てBell版(1650)に至るテクストの派生関係の調査、を目標に掲げた。このうち(1)については、章(Chapter)構成、本文と挿絵の関係、文体の洗練化、欄外教訓の付与の観点のもとに調査を行った結果、43章であったものが25章に再編成されたこと、粗野な言葉遣いを書き改められていること、内容から示唆を得て木版画が作成さる監修とは異なり、本文が挿絵をもとに改編される事実、教訓に窺える本文の当時の解釈、などをAllde第2版に固有の特徴を明らかにすることができた。 (2)のAllde第2版以降の諸版とその派生関係については、PDFテクストの入手は済ませ、各版の相違について、概略、見当をつけることができたが、実際のコピーを観察しての調査を実施することが必要である。しかしこの現地調査はテロ事件の勃発のために延期せざるを得なかった。(次年度に実施する予定。)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度(計画の2年目)は、 (1)ピンソン第2版のテクスト編集の解明、 (2)Allde第2版を経てBell版(1650)に至るテクストの派生関係と諸版の特徴を記述すること、 を目標に掲げたが、「研究実績の概要」で示したとおり、(1)についてはほぼ順調に調査研究を進めることができた。しかし(2)については、更にPDFテクストにより、関係する版の入手が必要であるとともに、直接に所蔵図書館を訪問し、現存コピーの観察を行う必要がある。 以上により、概ね順調に研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
3年目として、初年度に立てた研究目的を一部修正し(研究を進める上で、新たな観点が立ち上がり、かつ未だ研究の手がつけられていない問題。)、17世紀おける『狐物語』の出版事情を解明する。具体的には、Allde第2版をもとに(第1部)、狐ライナールの続編(第2部と第3部)が新たに執筆され、これらが組み合わされた形で読者に提供される。例えば第1部と第2部、第1部と第3部のように、「合冊本」として現存している。そのいずれの版にもE.Brewsterが関与しており、当時の狐物語の受容事情と販売の戦略の点から究明が待たれる。 従って、H28年度は研究の最終年度として、これまでの調査研究を取りまとめるとともに、狐物語の続編の制作・販売戦略についても解明し、キャクストンに始まりPynsonとAlldeを経て、続編が作成されるにいたる出版史を総合的に記述する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ブリュッセルでのテロ勃発により、予定していた調査(3月25日ー4月2日)を中止したことが執行額に残余が生じた理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
延期した調査を平成28年度に実施する。
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