本研究では、貧乏白人という、18世紀から現在まで合衆国に存在してきた社会階級の文化的表象の歴史的変遷をたどった。下層の貧乏な白人は、植民地の時代から現代に至るまで常に存在し、白人と非白人との緊張関係を時には激化させ、時には緩和させて、人種関係を形作るのに重要な役割を果たしてきた。しかし、それにもかかわらず貧乏白人が、白人でもなく非白人でもない〈貧乏白人〉という独立した存在としてみなされることはあまりなかった。それは、あくまでも〈白人であって、白人ではない〉という両義的で曖昧で時として不可視であり、まさにそうであるがゆえに、緊張に満ちた人種関係、階級関係を根底から支えてきたのである。
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