研究課題/領域番号 |
26370331
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
坂野 明子 専修大学, 文学部, 教授 (20153900)
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研究分担者 |
伊達 雅彦 尚美学園大学, 総合政策学部, 教授 (00254889)
佐川 和茂 青山学院大学, 経営学部, 教授 (20137871)
大場 昌子 日本女子大学, 文学部, 教授 (80160612)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アメリカ文学 / ユダヤ系作家 / ホロコースト / 記憶の継承 |
研究実績の概要 |
4名の研究者は、それぞれの関心領域を広げる形で、アメリカ・ユダヤ系作家のホロコースト表象の研究を続けている。 2014年7月には研究会を開き、伊達が新世代の作家 Jonathan Safran Foer の話題作Everything is Illuminated (2002) に見られる、ウクライナとアメリカを対照した新しいタイプのホロコースト表象について報告した。2015年3月の研究会は、本来12月に開く予定であった研究会が報告者の都合により開催できなかったため、2名が研究報告をするかたちとなった。大場は Nicole Krauss の、ホロコーストの記憶を現代アメリカでどのように継承するかを複雑なストーリーで描き出した The History of Love(2005) について報告した。佐川は Gerald Green の The Last Angry Man(1956) について、20世紀半ばという古い作品であり、ホロコーストへの言及は少ないものの、むしろホロコーストを語ることがタブーであった時代にホロコースト表象の可能性を切り開いた作品であることを明らかにした。 坂野はNathan Englander の For the Relief of Unbearable Urges(1999)と What We Talk About When We Talk About Anne Frank(2012)を比較し、二つの作品にみられる結婚の姿の違いが、同化したユダヤ人のホロコーストへの複雑な思いと関係していることを明らかにした論文を『ユダヤ系文学と「結婚」』(広瀬佳司ほか編、彩流社、2015)に発表した。 このほかにも4名の研究者はユダヤ系作家やユダヤ系文化について精力的に研究し、執筆を続けており、研究は順調に推移している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年度は、大場が大学における重要な役職にあるため、学内業務の負担が大きかった。そのこともあり、研究会の回数も当初の予定より少なくならざるを得なかった。坂野は家族の病気、入院などの不測の事態があり、思うように研究を進めることができなかった。佐川と伊達は精力的に学会発表、執筆活動を進めていった。従って、総合すると、上記の判断が妥当だと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、研究会で各自が収集した情報を交換し、新たな作家についての研究報告を重ねることで、21世紀におけるホロコースト表象の多様性をきわめていく。また、2014年度は実現できなかった、海外での情報収集を実行し、さらなる研究の深化を図りたい。 さらに、2015年は第二次大戦後70年、すなわち、アウシュビッツ解放70年ということもあり、今年度の後期には、公開シンポジウムの形で広く社会に「ホロコーストの記憶を継承する文学」について情報発信したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の個人的な事情、および分担者のうち1名が役職の負担が大きく、海外での調査ができなかったこと、また、シンポジウム等の企画もできなかったことが次年度使用額が生じた理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年度は各自の研究の続行のためにある程度の使用が見込まれ、また、海外での調査やシンポジウムを実施することで、助成金を有効に使いきることができると考えている。
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