研究課題/領域番号 |
26370332
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研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
冨田 爽子 拓殖大学, 工学部, 教授 (30197925)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 英文学 / イタリア文学 / 書誌学 / 出版業者 / 17世紀 / 出版 / 16世紀 |
研究実績の概要 |
今年度は、昨年度に引き続き、研究者が定義した‘Italian books' を、印刷業者の視点から再構築する作業に専念した。ESTC は原則として、著者または翻訳者、編集者別に編纂されているが、書名などからだけでは判別できないものも多く、その抽出には多くの時間と労力を必要とした。学期中は電子データ等により大まかなデータ整理を行い、夏に7週間にわたって英国で主として British Library や Lambeth Palace Library、Oxford University Library、Cambridge Univeristy Library、John Rylands Library、The Shakespeare Institute などで資料にあたり、分析を試みた。同時に本研究では抽出した本が訳出されたイタリアの原典にも当たることが不可欠であり、これらの書物の多くは電子化されておらず、また必ずしもBritish Library に所蔵されていないので、その詳細を探るのに困難を極めた。幸い各国の図書館が、問い合わせなどに快く協力してくれるので、大いに助けられた。画像なども時間はかかるが、2~3ヶ月くらいで入手できるようになり、研究の進展に役立った。 17世紀の書籍に関する書誌学的研究はイタリア本国でも、まだ十分になされているとは言えず、英国の書誌学会にはその点においても期待されている。British Library では本研究の土台となっている拙著2巻が Rare Books Reading Room の開架書棚に設置されている。拙著が British Library で書誌学の基本資料として評価いただいている証であり、光栄に思っている。また Studies in English Literature, 1500-1900 でも有益な書物として紹介されている。時間と忍耐の要るテーマであるが、研究は概ね順調に進んでいる。特殊文字や、ラテン語、フランス語、イタリア語などを含んでいるため、まだしばらく調査及び研究が続くが、なんとか無事に完成させたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は英国ルネッサンス期に‘Italian books' の出版に係った印刷業者の活動を検証することを目的としている。平成27年度は、1558年~1642年までの該当期間のうち、主として1589年から1608年に活躍した出版業者に焦点を当て、それらの書籍の資料収集を行った。その調査のため1回の海外出張を行い、収集は概ね順調な成果を挙げている。 しかし、研究調査対象が ‘Italian books' 以外の書籍をも含むため、資料は膨大であり、各書籍についての詳細な検討には、まだまだ膨大な労力と時間が必要であることも明らかになってきた。本研究においては、まず研究範囲の書籍に関する資料を正しく収集整理することが、肝要であると考える。各印刷業者の活動の中で ‘Italian books' の出版がどのような意味を持つのかを今後の研究で明らかにしたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究調査の対象となる1558年~1642年までに ‘Italian books' の出版に携わった出版業者のうち、主として1609年以降に活躍した出版業者に焦点を当て、それらの書籍の資料収集を行う。その調査のため1回の海外出張を行う。 昨年度の研究の中で浮かび上がってきた、出版業者全体がひとつの有機体として、どのように時代と係ってきたかについての実証的な研究を推進するひとつの方法として、出版書籍業組合の記録などばかりでなく、各書物の前付けの検証が極めて有効であることが今年度の研究で、ますます明らかになってきた。よって従来の書誌学的記述の手法に加えて、一冊づつ現物をさらに詳しく検証していくことを本研究の基本姿勢とすることにした。
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次年度使用額が生じた理由 |
学内における年度内精算締切(2月)後に出張を予定していたので、その出費を次年度に回すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は移籍等の事情から、2月に出張することが難しくなったので、研究調査を次年度の出張に組み込んで実施することにした。次年度の出張は4月に実施の予定である。
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