本研究は大きく二つの作業段階に分かれる。1)アメリカ本土にある日系収容所(ワイオミング州の現ハートマウンテンインタープレティヴセンター)に保管されていた手紙や書簡、そして本研究該当の日系アメリカ作家や芸術家(ここではカレン・ヤマシタ、イシゴ夫妻の遺族)とのインタビューをする段階、次に2)それらの資料を基に、社会主義的要素がどのように介在されているのかを、作品にあたって分析するという作業段階。ここでは70年代日本における日本赤軍事件などの資料を日本、およびアメリカで収集する作業も含まれる。 ワシントン州立大学のパメラ・ソーマ教授とハワイ大学のルース・スー准教授のもとMLA 出版で日系作家カレン・テイ・ヤマシタの作品に関する教育法を2017年度に出版することになっている。最終年度である29年のMLA の発表ではその準備としてパネル・ディスカッションをした。上記2名と上海のフダン大学 のウェイ・ジン教授、そしてノース・ジョージア大学のアナスタシア・ライト教授を含めた4人の発表(ソーマ教授は司会)となった。まずフィラデルフィアでの発表の前にスー准教授とホノルルで事前打ち合わせをし、その後フィラデルフィアで発表した。発表では鋭い質問と議論が行きかうパネルとなった。発表後は今後の出版のスケジュール(6月に原稿提出など)を話し合った。その後、牧野はUCLAの大学院図書館地下にあるスペシャルコレクションで日系収容者に関する資料を収集し、14日に帰国した。すべては計画通りに出張を終え、UCLA では今までになかった日系収容者の日記、手書きの雑誌等を発見し、予想を超えた発見があったといえる。 本研究の最終目標とは、3年後の29年に研究書『日系性とそのトランスナショナルな転換―強制収容所と社会主義をめぐって』(仮題)の下書きであるが、現在のところ作成中である。
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