研究課題/領域番号 |
26370336
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研究機関 | 武蔵野美術大学 |
研究代表者 |
相原 優子 武蔵野美術大学, 造形学部, 教授 (30409396)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ソール・ベロー / ユダヤ系アメリカ人作家 |
研究実績の概要 |
平成27年度は前年度に引き続き、ユダヤ系アメリカ文学に於けるイスラエル表象と平和のレトリックの研究に必要な資料を集めることを中心に行った。研究を進めるにつれて、特にヴィクトール・フランクル、エマニュエル・レヴィナス、ジュディス・バトラーといったユダヤ系思想家たちの論の中にホロコーストとパレスチナ・イスラエル問題をつなぐ視点、そして平和のレトリックを考えるのに有効な手掛かりがあることに気づいた。前半はフランクル関連のもの、後半はレヴィナスとバトラーの著作を読みすすめた。女性作家のシンシア・オジックの著作も研究の視野に入れつつも、昨年度から取り組んでいるソール・ベローの作品の分析も続けた。特に彼の習作と見なされ、代表作の影に隠れて充分論じられることの少なかった長編第2作目『犠牲者(The Victim)』(1947)に関する分析を論文にまとめた。この作品に見られる「他者」との遭遇による「主体性」の問い直しというテーマで「他者と出会う街ニューヨーク」という論文を書いた。現在は、ソール・ベローの初期短編"Leaving the Yellow House"ともう一人の研究対象であるシンシア・オジックの長編小説『プッターメッサー・ペイパーズ』の中に見え隠れするイスラエルのモチーフを探っており、それを次年度に続けて、論文にまとめたいと思っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度から継続してこの研究の基礎を成す作家のソール・ベローの作品を中心に論文を執筆しているため、今年度開始する予定であったシンシア・オジックの作品の分析がやや追いついていない状況であるが、徐々にどの観点で分析するかなど、研究と論文の骨組みは出来つつある。
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今後の研究の推進方策 |
今回の研究の根幹を成すソール・ベローの作品の研究は常に1つの基礎軸として続けつつも、女性作家シンシア・オジックの作品に見られるイスラエル表象とグレイス・ペイリーの作品に見られる平和のレトリックの分析を徐々に本格的なものへと進めていきたいと思っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に引き続き、研究内容関連の書籍の購入および研究環境をさらに充実させるためのパソコン(小型)などを購入し、その点では概ね予定通りと言える。次年度使用額が生じた大きな理由としては、調査出張を昨年度から予定していたものの、学務の関係でタイミングが難しく、そのために計上していたものが使用出来なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
文学研究の最重要ツールはやはり書籍、資料であるため、それらの購入が主なものとなる。併せて研究活動に必要な文房具や物品を購入する。研究の進捗状況を確認し、調査出張の妥当性を検討した上で、その計画を遂行するために使用する。
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