研究課題/領域番号 |
26370337
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
森 あおい 明治学院大学, 国際学部, 教授 (50299286)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アメリカ文学 / アフリカ系アメリカ人 / トニ・モリスン / 国際研究者交流(アメリカ) / アメリカ |
研究実績の概要 |
平成26年度は、周縁化されたアフリカ系アメリカ人の歴史に関する研究を「ホワイトネス」の視点から行った。特に、モリスンの『青い目がほしい』 (1970)、『マーシィ』 (2008)、『ジャズ』(1992)、『デズデモーナ』(2012)を再読し、白人中心の歴史では抹消されてきたアフリカ系アメリカ人の歴史を読み解いた。具体的には、ホワイトネス優位のアメリカ社会の枠組みの中で、マイノリティの人々が政治的にも搾取されていたことを究明した。 なお、平成26年5月には、北海道大学で開催された日本英文学会第86回大会のシンポジウムでモリスンに関する発表を行い、モリスンが試みるアフリカ系アメリカ人の歴史回復の手法について他の研究者との意見交換を行った。さらに、6月には海外研究協力者のジェームズ・ピーターソン教授を日本に招聘し、研究に関する助言を受け、また、黒人研究の会第60回大会の基調講演を依頼し、日本の研究者も交えてアフリカン・アメリカンの文化・文学研究に関する意見交換の場を設けた。ピーターソン氏は、アフリカ系アメリカ人の伝統的文学・文化研究にヒップホップ文化を取り入れていることで知られている。ピーターソン氏との国際情報交換は、今後のモリスン研究の可能性を違った視座から行う可能性を示唆してくれた。(ピーターソン氏の招聘は、当該年度に来日を予定していた協力研究者キャロリン・デナード教授が事情により来日できなくなったため、急遽代理として推薦していただき、実現した。)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外研究協力者の招聘については、該当者の事情により昨年度は実現できなかったが、急遽代わりの研究者を紹介しいてただき、意見交換を行うことができた。研究テーマに関する学会発表、また論文執筆を通して、研究経過の公表も行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、「アメリカン・ルネサンスにおける白人中心のキャノンにおけるアフリカ系アメリカ人の存在」に焦点を当てて研究を行う予定である。特に、ホワイトネス研究の重要な視座を提示している、トニ・モリスンの批評書『白さと想像力』(1992)を基に、19世紀中葉にアメリカ文学の黄金時代を築いたアメリカン・ルネサンス期の白人作家によるアメリカ文学のキャノンとして位置付けられるテキストで遠景化されたアフリカ系アメリカ人の存在を読み解く。また、アメリカ文学の系譜において長い間、不可視とされてきたアフリカ系アメリカ人の存在を焙り出すモリスンの手法を1992年に出版された『ジャズ』を例に考察し、白人中心のキャノンに対するモリスンのレスポンスを明らかにする。 本年5月21日から24日にかけて米国ボストンで開催される第26回アメリカ文学会(American Literature Association)のトニ・モリスンに関するセッションで "Reexamining Representations of Whiteness in Toni Morrison's Desdemona“というタイトルの論文を発表することが決定している。研究協力者であるキャロリン・デナード教授も同じセッションで発表することになっており、発表後は、お互いの論文について意見交換を行う予定である。なお、学会出張旅費については、科研費応募時に予定していた平成27年度の夏休みのワシントン・DCおよびニューヨークの調査旅行のための旅費を当てることとする。夏休み中には、アメリカ文学会で発表した論文を、他の研究者からのレヴューをもとに修正し、国内外の雑誌に投稿する準備を進める予定である。
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