本研究では、アフリカ系アメリカ人女性として初めてノーベル文学賞を受賞したトニ・モリスンを取り上げ、彼女が描くマイノリティとして周縁化されてきたアフリカ系アメリカ人、特に女性のメディアにおける表象と、彼女たちが権威主義に対抗する手法を考察した。さらに、モリスンが現代の多文化時代の文学、文化に与えた影響を考察し、その作品を源泉として、人種、ジェンダー、階級、自然の関係に見られる巧妙に隠された権力構造と闘う手法を明らかにし、他者排除を前提とする均質的な価値観に対抗する多様性を尊重し、他者との共生をめざす文化研究を展開した。
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