研究課題/領域番号 |
26370338
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
新田 啓子 立教大学, 文学部, 教授 (40323737)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Mark Twain / Harriet Beecher Stowe / William Faulkner / Zora Neale Hurston / プラグマティズム / 功利主義 / ポピュリズム / 憎悪犯罪 |
研究実績の概要 |
本研究推進2年目にあたる平成27年度は、当初の予定どおりその前半期に、26年度からの1年半を費やした第1期文献研究を終え、後半期に、次なる1年半で遂行すべき第2期文献研究に入った。第1期に中心的に取り組んだのは、19世紀の作品及び史料である。なかでもMark Twainの旅行記における帝国主義批判の言説と、Harriet Beecher Stoweの反奴隷制小説群については、2件の講演と1本の論文を通じた最新成果の公開につながる詳細な分析を行った。これら二人の作家による作品とその周辺文献群、ならびに思想史研究を中心とする二次文献の検討において見出されたのは、アメリカ独自の哲学伝統である「プラグマティズム」と「功利主義」の系論が、奴隷制や他国の領有、さらには自然環境の破壊や戦争などの正当化に関わってきたということ、かつそれが展開するロジックに批判的な思想が、同時に発生していたということである。また前半期には、この知見に基づいて、現代アメリカの憎悪犯罪をテーマとしたシンポジウム発表を行った。 他方、年度後半期に着手した第2期文献研究で取り組んだのは、William Faulkner, Zora Neale Hurstonの1940年代の小説と、1930~40年代に書かれた日本のモダニズム作家の作品群である。これらの年代に書かれた作品に焦点を絞ったのは、20世紀初頭における暴力正当化の言説がポピュリズムとの関連で流布した可能性を、研究の当初より問題視してきたからである。Faulkner, Hurstonの作品では、所謂新南部で台頭した新興階層の像の解析に基づいて、資本主義の趨勢とともに正当化された暴力の表象様式を明らかにし、2件の学会発表を行った。日本のモダニズム作品については、人種表象を介して正義の観念を問いただす傾向を主題とし、28年度の刊行が予定されている論文執筆を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の作品研究を踏まえて取り組んだ、プラグマティズムとポピュリズムの影響を受けた暴力をめぐる観念の解明は、本研究が単なる散発的な暴力表象分析の羅列ではないことを表している。よって本研究は、思想史が暴力といかに取り組んできたかという命題を導く作業として、順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
27年度前半期に主題的に研究したTwainとStoweは、アメリカ文学史上最もメジャーな地位を占める作家といえるが、彼らの係わるプラグマティズム批判の系譜を考証した研究はいまだ存在していない。この点は、当初の目論見を超えた本研究の意義を示しているといえるため、第二次文献研究のテーマであるポピュリズムと並行し、今後も考察を続けたい。 本研究では、今後も一貫し、特定の暴力を「正義」と称して正当化する諸言説を支える概念装置を解明すべく推進される。近現代の文学作品に加え、次年度以降視野に入ってくるのは、映画等の視覚文化作品を含めた「自警暴力」、「正当防衛」を物語化する様式である。これらを分析するにあたっては、比較論的方法を取り、日米現代文化双方に見られる自警行為や私的権力の表象を精査し、その歴史的文脈と社会的影響を精確に見極める。そのうえで、それが異民族や異文化に対する憎悪の感情といかなる関係を取ってきたのかを概念化したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
校務の都合で、当初予定していた資料調査のスケジュールを大幅に短縮したため、旅費の執行が少なくなったことに起因する。
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次年度使用額の使用計画 |
研究遂行のための調査や資料の取得費、ならびにそのための出張費として利用するほか、成果公開に伴う出張費、および校閲費等の必要諸経費として使用する計画である。
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備考 |
マイク・モラスキー(早稲田大)、坂上康博(一橋大)、薮耕太郎(仙台大)、中嶋哲也(茨城大)、田邊元(早稲田大)との研究会(東京都新宿区・早稲田大学)にて発表されたPaul Bowman (Cardiff大)の論文サイト。
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