本研究は、1850年代から1970年代までのアメリカ文学・文化作品に表れた暴力表象を対象としたものである。なかでも「正義の暴力」ないしは「正当な暴力」と前提された範疇に注目し、それを主題化した作家の立場ならびに作品の社会的・倫理的意義を検証することを究極の目的とした。「暴力」が米国文化の支配的要素であり続けてきたという事実はすでに多くの研究者により証されてきたが、その際しばしば、ある種の暴力の正当性を排他的に信奉し美化するという精神風土の特異性が指摘されてきた。この理解に基づいて、本研究では 1)自警、2)私刑、3)復讐、4)決闘の形態を取った暴力を対象に、その文学表象を歴史的に検証した。
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