研究課題/領域番号 |
26370342
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
板倉 厳一郎 中京大学, 国際教養学部, 准教授 (20340177)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 9.11同時多発テロ / 英語圏文学 / ポストコロニアル文学 / 原爆文学 / 比較文学 |
研究実績の概要 |
平成25年度に京大英文学会で発表したモーシン・ハミッド『気の進まぬ原理主義者』論を、アルベール・カミュの『転落』との仔細に比較研究し、さらにパキスタンの教育事情とハミッドの持つ教養との乖離を指摘し、大幅に改稿した論文へと改稿した。平成26年度に入手した資料により、研究発表の際にはつまびらかにすることができなかったこの作品のパキスタンの情景描写の特異性についてサイードのカミュ論を踏まえて論じること、さらにハミッドが前提としている事柄がパキスタンの言語事情、教育事情に鑑みて特異である点を指摘できた。この論文は『Albion』60号に掲載された。
また、同じく平成25年度にTrauma: Theory and Practiceの第3回大会で発表したカミーラ・シャムシーの『焦げ付いた影』論は、Inter-Disciplinaryのオンライン出版物に掲載された。さらに、『焦げ付いた影』が9.11小説でありながら、その冒頭で主人公が長崎で原子爆弾に被爆することから、これを日本の原爆文学との関連で読み解いた章を加えて大幅に書き直したものを書籍の一章として刊行する運びとなった。研究発表の段階では、この作品の冒頭を特徴付ける「顔」の「欠如」に着目し、レヴィナスの思想に照らし合わせて作品を論じていたものの、平成26年度に得た資料によって原爆文学との比較が可能になり、同じGround Zeroという英語が使われた日本への原爆投下が作品の第一部を占めていることの重要性を再認識するに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点では、順調に進んでいる。ただし、平成27年度より勤務先を変更するにあたって多忙であったこと、また他の研究(百科事典項目執筆、国際学会発表、教科書作成)も重なり、平成26年度中にしておくべきであった平成27年度の研究の準備がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度については、当初ナディーム・アスラムの『かなえられぬ祈り』の研究を予定していたが、先に平成28年度に予定していたH. M. ナクヴィの『ホーム・ボーイ』の研究を行う予定である。これは、『ホーム・ボーイ』がイギリスで行われるポストコロニアル文学研究会の題目に『かなえられぬ祈り』よりも相応しかったこと、モーシン・ハミッドの『気の進まぬ原理主義者』との関連性がより強いことがわかったからである。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に購入したパソコンおよびプリンタが比較的安価であった。この余剰額を研究図書の購入にあてる予定であるが、平成27年度に関西大学へ勤務先を異動するにしたがい、平成26年度末にその作業ができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年9月には、英国レスター大学でポストコロニアル文学会が開催される予定で、応募中である。この発表論文作成に必要な図書資料の購入の補填にあてる予定である。
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